このままでは欧州に大きな危機が訪れる--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

現在、欧州は制度上の危機に直面している。EU周辺国の債務危機に対して、分別ある決断を下す権限を誰も持っていないように思える。政治家や政策担当者は、ポルトガル、アイルランド、ギリシャ(PIG)の債務再編を行うのではなく、現実性の乏しい財政緊縮の実施を条件にかつてない規模の救済策を推し進めている。彼らは「路上で缶を蹴飛ばす」だけでなく、「山頂から雪だるまを突き落とそう」としているのだ。

当分の間、債務問題は経済的には管理可能である。なぜならユーロ圏はまずまずの経済成長を遂げており、PIGのGDPはユーロ圏の6%を占めるにすぎないからだ。しかし、EUの政策担当者たちは、「PIGが直面しているのは返済問題ではなく流動性危機である」とかたくなに言い張ることで、EU全体を危機にさらしている。

スペインやイタリアなどの主要経済国も、低成長と競争力欠如から大きな債務問題を抱えている。ユーロ圏の政府がやってはならないことは、「EUは暗黙の“トランスファー(資金融通)連合”であり、まだ構造改革を行う時間的余裕がある」と国民に信じ込ませることだ。

EUの幹部は、加盟国の債務再編は壊滅的な事態を招く、と主張している。確かに、ギリシャの債務再編が他国にも感染するおそれはある。感染の広がりを阻止するための唯一の方法は、ドイツがスペインとイタリアの債務の周りに強固な防火壁を築くことである。この手法は、真の通貨統合が行われている地域で実行できる、手堅い解決策である。にもかかわらず、なぜ欧州の指導者たちはこうした解決策を想定外と考えているのだろうか。

その理由はおそらく、厳しい決定を行い勝者と敗者を選別する統治メカニズムを持っていない、と彼らが信じているからだろう。EUでは、大胆な決定には加盟国すべての同意が必要である。計画を実施する権限や能力がないなら、代替プランを作成しても無駄なのだ。

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