このままでは欧州に大きな危機が訪れる--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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欧州に幸運はあるのだろうか。膨れ上がる債務と組織の機能マヒ、猜疑心が勢いを増す前に、害を及ぼすことなくそれらを沈静化するチャンスはあるのだろうか。

非常に大きな不確実性が存在する状況の下では、何でも起こりうる。今後数年にわたって、ユーロ圏の成長率が予想を上回った場合、銀行の財務内容は強化され、ドイツの納税者にも資金的な余裕が生まれるだろう。そして周辺国も十分な成長を遂げ、野心的な緊縮政策の約束を守ることができるかもしれない。

今こそIMFがEUを支援すべき

しかし、現在採られている戦略は、債務の爆発と無秩序な債務再編を招く可能性が高い。

なぜギリシャ国民(アイルランド国民やポルトガル国民も同様だが)は、フランスとドイツの銀行システムを支えるために何年間も緊縮財政と低成長を受け入れなければならないのだろうか。

スタンフォード大学のジェレミー・ビューロー教授と私が1980年代の国家債務に関する研究で示したように、外国人に対する数年間に及ぶ数%以上の純返済(返済額から新規融資額を控除した額)を、国家に強いることはまず不可能である。現在のEUとIMF(国際通貨基金)の戦略は、そうした返済を10年、あるいは20年にわたって行うことを要求している。周辺国への資金援助を求める際、ドイツの納税者が反乱を起こさないようにするためには、そうせざるをえないのである。

欧州は、IMFにおける指導力を維持する準備ができているようだ。IMFはすでにPIGに対して異例なほど寛容である。救済に前向きな新執行部が決まれば、その救済策をPIGが受け入れるか否かにかかわらず、さらに寛大になるだろう。

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