このままでは欧州に大きな危機が訪れる--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授


だが、欧州が今必要としているのは超軟弱なIMFではない。IMFが今なすべきこととは、制度上の危機から自ら厳しい決定を行うことができないEUを支援することだ。

IMFは、ポルトガルやアイルランド、ギリシャが競争力を取り戻し、債務を削減できるような政策プログラムを立案することによって、経済成長を実現するための現実的な希望を示すべきだ。IMFは、制度上のマヒ状態にあるユーロ圏の債務問題が、世界的な雪崩に発展するのを阻止しなければならない。

IMFの代わりを務める組織が存在するとすれば、それは独立した欧州中央銀行(ECB)である。しかしながら、もしECBが“最後の貸手”の役割を担うことになれば、最終的に同行は破綻に追い込まれるだろう。これは単一通貨の将来を保証する道ではないのだ。

どのような危機であれ、その最終的な結果の予測は難しい。一つのシナリオとしては、ユーロ相場が全面的に崩壊し、それによって輸出ブームが起こるということが考えられる。いずれにしろEUには好況が訪れるだろう。しかし、EUがより強力な“財政連合”に向かって決定的な行動を取らないかぎり、単一通貨がどの程度生き延びるかを予想するのは困難になるだろう。

Kenneth Rogoff
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001~03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

(週刊東洋経済2011年6月25日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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