モバイルトイレ、NUKUMARU…トヨタの新たな挑戦 高齢者や障がい者、災害を「自分ごと」として

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モバイルトイレを開発したトヨタ自動車によれば、健常者向けの災害トレーラー方式の移動トイレは実在するが、車いす利用者や介護者などの使用性を重視した移動式トイレはほとんど普及していないため、トヨタとして新規に設計したという。

設計にあたっては、牽引免許が不要で普通免許で牽引できる総重量750kg以下とし、トイレ内で車いすが転回しやすい空間(直径約150cmで360度の転回が可能)を確保しつつ、モバイルトイレ全体をできるだけ小さなサイズにすることが重視された。

排水については、モバイルトイレを設置する自治体が指定するくみとり業者に依頼する。トイレ約100回の使用で、汚水タンクは満タンとなる。

災害時などでは、下水道に直接排水することも自治体と協議することになるという。トヨタはこれまで、各種の屋外イベントなどで実際にモバイルトイレのプロトタイプを設置し、利用者の声を聞いている。

能登半島地震でもモバイルトイレは活用された(トヨタ自動車の資料より)
能登半島地震でもモバイルトイレは活用された(トヨタ自動車の資料より)

現場では、「すべての人にとっての“トイレの必要性”を改めて実感した」という感想が少なくないという。

また、トヨタが2022年に実施したアンケートによれば、モバイルトイレ体験会に参加した人の82%が「モバイルトイレがあれば、今までできなかったことができるようになると思う」と回答している。 

Mobility for Allを具現化する「RB活動」

モバイルトイレは、トヨタが2023年から始めた「RB活動」の一環だ。RBとは、リムービング・バリアのこと。

トヨタは近年、東京2020オリンピック・パラリンピックを含めて、「Mobility for All=すべての人に移動の自由を」という移動に対する企業としての考え方を示している。

ジャパンモビリティショー2023でも「Mobility for All=すべての人に移動の自由を」が掲げられていた(筆者撮影)
国際福祉機器展2023でも「Mobility for All=すべての人に移動の自由を」が掲げられていた(筆者撮影)

RB活動は、Mobility for Allに対する具体的な取り組みだと言えるだろう。移動に対する物理的、また心理的なバリアを取り除こうという試みである。

特に高齢者、障がい者、そして交通の不便な地域の住民などが「安心して一歩外に出てみよう」と思える、仕掛けや仕組みづくりを模索しているところだ。

現時点でRB活動は、モバイルトイレを含む7つの商材を用いている。キーワードは「今すぐやれるとこからまず取り組む」である。

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