モバイルトイレ、NUKUMARU…トヨタの新たな挑戦 高齢者や障がい者、災害を「自分ごと」として

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こうした中、経済産業省では認知症官民協議会 認知症イノベーションアライアンスワーキンググループが、2023年2月に「認知症予防に関する民間サービスの開発・展開にあたっての提言」をまとめた。その中で、国として当事者参画型の開発を進める方針を示している。

トヨタはこのような国の動きを鑑み、経済産業省を通じて福岡市との繋がりを得て、同市内でツギココの実証試験を行うに至ったという。そして、実際に福岡市の利用者からはポジティブな意見が寄せられている。

ただし、ツギココが今後、どのような商流で社会実装されるのか、また保険や補償のあり方をはじめ、どのように事業化していくのかを考えると、トヨタには民間企業のパートナー、国、地方自治体などと連携した、さらに注意深い対応が求められるだろう。

「自分ごと」として捉える姿勢

トヨタのMobility for Allという考え方について、一般的には高齢者や障がい者に対応した、トヨタが言う「ウェルキャブ(福祉車両)」を思い浮かべる人がいるかもしれない。企業の社会貢献といったイメージである。

移動の足として開発されたC+walk。ジャパンモビリティショー2023にて(筆者撮影)
移動の足として開発されたC+walk。トヨタ会館にて(筆者撮影)

だが、実際にMobility for AllやRB活動に直接携わる、トヨタ関係者の声を聞いていると、企業から社会に対する「貢献」という捉え方ではなく、社会が変化していく中で「社会がこれからどうあってほしいか」という「1人の人間としての意識」をしっかり持っているように感じる。

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今回、紹介した各製品担当部署の皆さんが、一様に「自分ごと」として製品やサービスについて熱く語ってくれたことが印象深い。

Mobility for Allの分野、社会実装に向けたバリアはたくさんある。そうしたバリアを「思い切って突き破る」のではなく、思いやりをもって「丁寧に一つひとつ取り除く」ことが「人にとって」、そして「社会にとって」大事なことだと感じる。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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