ケインズが描いた平和/戦争と経済のしくみ 二度の世界大戦を経て築かれた国際経済の基盤

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重要なのは、このグローバル化した経済社会の相互依存についての視点だ。この世界構造は、各国がほぼ閉じた独立経済となっていた、それ以前の状況とはまったく違っている。以前は、相手を完全に別の存在として、分捕れるだけ分捕ればよかった。それが少なくとも戦勝国にとっては最も利益となった。

だがもうそういう感覚でやっていてはいけない。ドイツをつぶせば、自分にとっての資源供給国でもあり、工業製品の供給国でもあり、そして最大の市場でもあった経済が消え、自分の首を絞める結果になる。だから戦後処理──賠償およびその後の仕組み構築──を考えるにあたっても、こうした経済全体の仕組みの変化を踏まえた対応が必須となる。

ナチス台頭と第二次世界大戦を予見

本書は当時のベストセラーとなった。中身の評価よりは、たぶん政府および条約交渉の代表団のトップ高官が、まさにほぼ現在進行形の会議の内幕をぶちまけた内部告発書、内幕暴露本として受け取られたのだろうという邪推は成り立つ。

が、それより重要なのは中身の話だ。ドイツがヴェルサイユ条約で定めようとしている賠償金など支払えないという点、そしてそれをゴリ押しすればヨーロッパ全体が飢餓と荒廃に陥るしかないという主張はどこまで妥当だっただろうか。

本書の4年ほど後に出た続編『条約の改正』では、恐れていたような即座の大惨事が逃れられたことは指摘されている。これは農作物の豊作などの幸運もある。一方で、本書での多くの見積りがおおむね正しく、それを受けて、確かに賠償金は多すぎるので、少しずつ現実的な水準まで減らそうという動きも見られることが述べられているし、またその後1920年代を通じて、その動きはさらに強まってドイツへの賠償要求は引き下げられた。おおむね彼の主張は、世界的な共通認識となったと見てもいいのかもしれない。

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