AIによる創作とわかると評価が下がることの意味 クオリティ以外にも評価に影響を与える要素

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このエピソードは生成AI登場以降の文化芸術や創作活動について、特筆すべき要素をいくつか含んでいます。

①特別な創作能力がない人間にも、質の高いコンテンツを生み出せるようになった

②「AIによって作成されている」ことが意味を持つ、あるいはAIによって初めて成立する文化コンテンツが生まれる

ところで、先ほどのエピソードにはちょっとした続きがあります。シンポジウムのための画像生成でアレコレ試したこともあり、自信がついて調子に乗った私は、生成イラストを公開したらどうなるか気になり、Twitter(現Ⅹ)にいろいろと投稿してみました。

その結果はさっぱりで、閲覧数はまったく伸びず、「いいね」もつかない。そもそも生成AIを用いて、自分の意図に沿った内容かつ公開に堪えうる質のイラストをつくるのは意外と難しく、投稿の頻度も思ったほど上がりません。

「AIイラスト」というマイナスイメージ

生成AIの登場後は、誰でも一定以上のクオリティの作品を生成・投稿できるようになっている状況もあり、埋もれてしまって見向きもされませんでした。

一方で、猛烈な勢いでAI生成イラストを公開し、多くの評価をもらっている人がいます。Twitterのフォロワー数ではそこまで差がなさそうなのに、何が違うのかをよく調べると、そうした方はもともと手描きのイラストレーターのようでした。

AI生成イラストと言っても、AIを利用した部分は一部で、他の部分はご自身の手で加筆して描いていたようです。私が投稿するAI生成イラストと比較すると、クオリティも投稿頻度も差は明らかで、勝負にならないレベルでした。

ただ、実は私の投稿のなかで1つだけ閲覧数が伸びて評価された作品がありました。Twitterで生成AIイラストを公開する際に、通常は「#AIart」や「#AIイラスト」などのタグを付ける習慣(というよりは暗黙のルール)があり、私も普段はこれを欠かさず付けていました。

ところが、1度このタグを付け忘れて投稿してしまったことがあり、それこそが評価された作品でした。この作品のクオリティ自体は他の評価されなかった作品と大差ありません。つまり、タグ付けしてAI生成のイラストだと伝えた時点で、評価されにくくなっていたのだと推測されます。

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