AIによる創作とわかると評価が下がることの意味 クオリティ以外にも評価に影響を与える要素

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さて、創造性に関するこの3つの定義を考えた場合、生成AIは明らかに「組み合わせ的創造性」「探索的創造性」の2つの「創造性」は持っているように思えます。

たとえば「隕石をバットで打ち返す猫」の画像のように、生成AIは本来は関連する点がなさそうな概念を組み合わせたものを生み出せます。

「隕石」「バット」「猫」という概念は既存の知識ですが、これらを組み合わせたものは(おそらく)過去になかったという点で、新しいものとなっています。

まさに「組み合わせ的創造性」によって創造されたものです。これらのAIの背後に言語モデルや拡散モデルという、生成のための一定のルールがあることを考えると、「探索的創造性」にも該当するでしょう。

生成AIに欠けている「革新的創造性」

しかも、これは単なる学習データの切り貼りではありません。膨大な学習データをもとに一般化された各概念を新しく生成して、それを違和感なく組み合わせています。③の「革新的創造性」に関しては、現在の生成AIに欠けているように見えます。

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ただ、実はこの種の創造性は人間の場合でも発揮されることはかなり稀です。たとえば、現在の生成AIのベース技術となっているディープラーニングという手法は、AIの分野においてかなり革新的なアイディアと言えますが、それが「革新的創造性」によって生み出されたものなのかと問われると怪しいところです。

ディープラーニングの基礎となるアイディアは、人間の脳を計算機上で再現するというものであり、計算機も人間の脳に関する知識もすでに存在していたものです。このレベルですら、「革新的創造性」があるとは言い切れません。世の中で人間の創造性が発揮されたとされる有名な例でも、この種の創造性に起因するものはかなり少数でしょう。

私が執筆したこの文章も、ある種の創造性に基づく創作ですが、これが「革新的創造性」に基づくものだとは言えませんし、私の普段の研究活動、プログラミングコードを用いた開発、日常的な発想も、ほとんどは「組み合わせ的創造性」や「探索的創造性」の範疇にとどまるものです。

今井 翔太 AI研究者

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いまい しょうた / Shouta Imai

1994年、石川県金沢市生まれ。東京大学 大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻、松尾研究室に所属。博士(工学、東京大学)。人工知能分野における強化学習の研究、特にマルチエージェント強化学習の研究に従事。ChatGPT登場以降は、大規模言語モデル等の生成AIにおける強化学習の活用に興味。著書に『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト 第2版』(翔泳社)、『AI白書2022』(角川アスキー総合研究所)、訳書にR. Sutton著『強化学習(第2版)』(森北出版)など。

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