ふるさと納税不正疑惑の自治体が「資料は破棄」 「サーバー負荷下げるため」とあきれた言い分
公文書管理法は第4条で「行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡づけ、または検証することができるよう」文書の管理を規定する。地方公共団体に対しては「文書の適正管理に必要な施策を策定し、実施するよう努めなければならない」と求めている。
何が行政文書に当たるかには定義づけがある。実施機関の職員が職務上作成するか外部から取得し、実施機関の職員が組織的に用いて管理しているものが行政文書とされる。もちろんメールや画像などの電磁的記録も含まれる。
国見町が廃棄した企業側からのメールや資料には、町がどのように仕様書を作成したかを跡づける情報が多分に含まれていた。しかも、メールは複数の町職員がCCで受け取り、内容を共有していた。いずれも事業の経緯や実績の検証のために必要不可欠な行政文書といえる。
企業版ふるさと納税制度を所管する内閣府は2022年12月にQ&Aの形で示した見解で、寄付事業における入札契約のプロセスについて「自治体が説明責任を負う」と明記する。国見町は説明責任を果たす気があるのだろうか。
町長までもが虚偽説明
国見町の引地真町長は2023年4月の住民説明会で、救急車事業の仕様書作成について「ワンテーブルが直接的に関与した事実はない」ときっぱり言い切った。しかし、その説明の根拠とすべき行政文書を捨て去っていたのだから、あきれて物も言えない。そして事実関係でいえば、引地町長が行った町民への説明は明らかな虚偽と言わざるを得ない。
思い起こされるのは、2018年に相次いで発覚した森友学園に関する財務省の決裁文書改ざん事件や、陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報隠ぺい問題だ。批判の高まりを受けて国は2019年、業務で使用する電子メールを自動的に廃棄するシステムの運用を改め、行政文書の管理に関するガイドラインも改正した。
一方で多くの地方自治体は管理すべき文書の種類や期限を「内規」や「要綱」で定め、文書管理のルール自体を条例で制定する動きは乏しいのが実情だ。
住民の代表である百条委の追及を受けてもなお、文書廃棄を口実にして言い逃れを続ける国見町の姿勢は、国民の「知る権利」をないがしろにしてきたこの国の縮図のように思えてならない。
行政文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とうたう公文書管理法の理念が問われている。
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