ふるさと納税不正疑惑の自治体が「資料は破棄」 「サーバー負荷下げるため」とあきれた言い分

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国見町は2022年の9月議会で事業予算を計上し、担当課は同時並行で救急車事業の委託先の選定に使う仕様書の作成を進めた。

仕様書の作成について、担当職員は百条委で「他自治体が作った仕様書をインターネットで集めて参考にした」と説明。ワンテーブルからは「資料提供を受けていた」と証言したが、どこの他自治体の仕様書を集めて参考にしたのか、ワンテーブルからどのような資料を提供されたのかも「覚えていない」という。

『河北新報』は国見町の職員が「消した」と主張するワンテーブルとの電子メールや参考資料の一部を入手している。2022年9月に交わされたメールには、車体製造を請け負ったベルリングが国見町用に「参考仕様書」を作成し、ワンテーブルを介して町職員に提供した経緯が書かれていた。

国見町とワンテーブルとの間で交わされたメール(写真一部加工。提供/『河北新報』)

ワンテーブルの担当者は町職員宛てのメールにおいて、参考仕様書を「ベルリング社側からいただきました」と紹介し、車体の寸法や設備は「国見町用に記載いただいている」と伝えていた。

翌10月に完成した町の仕様書はベルリング提供の「参考仕様書」をベースに文言調整がなされ、完成した仕様書にはベルリング製の車両の特徴に一致する指定が多数盛り込まれた。

東洋経済がDMMに「子会社ベルリングが福島県国見町用の仕様書を作成し、ワンテーブルに送ったのは事実か」を問うたところ、DMMは「(ワンテーブルからベルリングに対し)仕様書を提出してほしいとの依頼を受け、提出したことはある」と認めた。

その上で「(ワンテーブルに渡した仕様書は)ベルリングが一般に配布しているもので、特別に提供したものではない」と回答。国見町とワンテーブルの間のやりとりには「一切関わっていない」とし、最終的に国見町がどのように仕様書を作成したかは「存じ上げない」と強調した。

ただ、ワンテーブルの担当者が国見町に送ったメールには「(参考仕様書は)国見町用に記載いただいている」と書かれており、DMMの回答とはつじつまが合っていない。 

内部文書を「個人的なメモ」と釈明

『河北新報』は、仕様書の記載内容を調整する際に使われた国見町の内部文書も入手している。そこには町からワンテーブルへの質問事項や要望が一覧になって列挙され、車体の室内寸法などを細かく指定することで他社を「排除したい」との記述もあった。

国見町の仕様書は公正な入札を妨げた疑いがあり、発注者の関与を取り締まる官製談合防止法などに触れる可能性がある。

百条委で担当職員はこの内部文書の存在を認め、「個人的なメモだ」「誤解を招く表現だった」などと釈明した。文書はプリントアウトしたものを含め「既に廃棄した」という。

ワンテーブルからのメールを同時受信していた同僚や上司も「不要と思い消去した」と口を揃えた。町が事業の正当性や合法性を主張する上で不都合になるメールや資料は、片っ端から消し去られていた。

百条委では、メールや文書の廃棄について開き直りとも取れる発言も飛び出した。

証人喚問で文書管理を担当する国見町総務課の課長は「メールが行政文書に当たるかどうかは議論がある」などと自説を語り、「サーバーの負荷を下げるため、職員には普段から不要なメールを削除するよう呼びかけている」と悪びれもせずに話した。

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