無印良品、課長以上は「朝8時」から挨拶当番! 「奇跡のV字回復」を支えた社風改革

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遠藤 功(えんどう・いさお)早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長。早稲田大学商学部卒業後、三菱電機、米国系戦略コンサルティング・ファームを経て現職。早稲田大学ビジネススクールでは、経営戦略論、オペレーション戦略論を担当し、現場力の実践的研究を行っている。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。

松井:「挨拶当番」以外にも、社風を変えるために、役職の有無に関係なく「さん付け」で呼ぶ習慣も徹底させました。部門長に5段階の「挨拶と『さん付け』チェック表」を渡し、毎日の終礼で、社員に「挨拶」と「さん付け」ができたかどうかを自己申告してもらいました。

遠藤:自己申告方式も、社員に「やらされ感」を持たせないためですか?

松井:やはり、強制では身に付きませんからね。さらに「ノー残業デー」を経て、「毎日18時半退社」へと進めていきました。

遠藤:朝の挨拶を皮切りに、「社風改革」を本格化されたわけですね。しかし、18時半退社の徹底はかなり難しそうですが、いかがでしたか?

松井:やはりノー残業デーの時点で、自宅に仕事を持ち帰る社員がかなりいました。そこで全員の仕事量を1割減らすなど、業務内容の見直しも進めたのです。

遠藤:仕事量の削減を実現された点が、会社の本気度を全社員に伝えるうえで、とても重要だったと思います。そもそも、仕事を自宅に持ち帰るだけなら、社員の方々は18時半退社の効果を実感できませんしね。

成功体験から脱却するためのマニュアル

遠藤:話を少し戻しますと、松井さんが、従来の社風からの脱却を決意された、いちばん大きな理由は何だったのですか?

松井:当時は優秀な社員個人の経験を重視するあまり、極端に言えば、店長が代わると店頭ディスプレーや店舗レイアウトまでがらりと変わり、現場もかなり混乱していました。

遠藤:それだと、常連のお客様にも不便を強いかねませんね。

松井:そうなのです。また、ある売り場の業績が悪いと、原因をきちんと究明せずに、「店長がダメだ」という話にもなりやすい。その結果、店長が何回も代わり、「時々はうまくいく」という、まだまだ幼稚な組織だったと思います。

遠藤:特定の社員に依存するあまり、全社員が本来共有するべき業務上のスキルやノウハウが、本部や店舗にもあまり蓄積されていなかったわけですね。

松井:ええ。無印良品ブランドが始まって20年が過ぎた頃でしたが、それは西武百貨店や西友を含めて、当時のセゾングループの弱点でしたね。

遠藤:セゾン文化は、ひとつの時代をつくりましたからね。その成功体験が強烈であるほど、否定するのは大変だったはずです。だからこそ、朝の挨拶レベルから、社員に新たな習慣をしみ込ませる必要があったわけですね。

松井:そのとおりですね。ひとつの成功体験は、時代が変わると、むしろ会社の足を引っ張る原因になりがちですし。

遠藤:そこで「社風改革」を経て、特定の個人に依存せず、「誰でも一定の成果を出せる」マニュアルづくりに取り組まれるわけですね。対談後半は「視察殺到!無印良品のマニュアルの中身」という観点から話を伺います。

(撮影:梅谷秀二)

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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