地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか
中でも、トモニHDが得意とする中小企業や事業用不動産向け貸し出しはリスクが高く計測され、一般にはリスクウェイト100%、つまり貸出残高が全額リスクアセットとしてみなされる。
同社のディスクロージャー誌によれば、2023年3月末時点でリスクウェイト100%に分類される資産は、約1.9兆円にのぼる。
同社は近年貸し出しを積極化しており、リスクアセットは直近3年間で10%以上増えた。今後も中小企業の資金需要に応えていると、リスクアセットの膨張を通じて自己資本比率が低下しかねない。
そこで「(公募増資によって)財務基盤を一層強化し、貸出金増強に伴うリスクアセット拡大に備えることが必要と判断した」(トモニHDの開示資料)とする。
「増資はかねて検討していた」(前出の幹部)というが、8月中旬に300円台後半だった株価が、9月以降400円台後半に乗せたことが背中を押したようだ。
「この株価水準での増資はあり得ない」
「中小企業支援のための資金調達」とのもっともらしい理由を掲げるトモニHDだが、株主は今回の公募増資に疑問を抱いている。
「この株価水準での増資はあり得ない」。ある機関投資家は語気を強める。やり玉に挙げるのはトモニHDのPBR(株価純資産倍率)だ。公募増資発表日の12月5日時点でPBRは0.31倍。実際には発表直後に株価が急落し、発行価格はPBR0.23倍の水準で決まった。
低PBRでの増資には2つの問題点がある。1つは発行体が調達する資金の減少だ。トモニHDは公募増資などで約112億円を調達する見込みだが、仮に株価がより高値で推移し、発行・売り出し価格をPBR換算で1倍の水準に設定できていれば、同じ発行株数でも調達額は4倍に増えていた。
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