パチンコ業界に異色の「増資ラッシュ」到来の深層 株価は大幅下落、業績絶好調のさなかになぜ?

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パチンコ店内のイメージ
スマスロ特需に沸くパチンコ業界。しかしなぜか、”悪魔の増資”とも呼ばれる手法での資金調達が相次いでいる。写真はイメージ(写真:PIXTA)

パチンコ業界に今、異色の”増資ラッシュ”が到来している。

2023年11月、東証スタンダード上場のゲームカード・ジョイコホールディングス(HD)が、行使価額修正条項付き新株予約権(通称「MSワラント」)の発行を決めた。同社は、遊技機の台と台の間に設置されている機器「ユニット」の大手メーカー。想定する調達金額は54億円で、新製品の開発やM&A(合併・買収)などに充当するという。

MSワラントは、株価の変動に伴い、行使価額が調整される新株予約権のこと。権利行使の際に時価よりも安い価格で新株を取得できるため、引受先がほぼ確実に儲かる仕組みだ。

引受先はたいていの場合、権利行使の際にカラ売りを仕掛けるため、株価に下落圧力が働く。また、行使が進めば株数が増えることから、1株当たりの価値は希薄化する。ゆえに投資家からは「悪魔の増資」と嫌われる。

裏を返せば、そうした資本調達に頼らざるをえない状況にまで追い込まれた企業の選択肢となることが多い。ここ数年の事例では、コロナ禍で財務が悪化したペッパーフードサービスやDDグループ、経営不振で上場廃止に追い込まれたオンキヨーホームエンターテイメントなどが挙げられる。

昨年はパチンコ関連企業4社が相次ぎ発行

しかし、足元でパチンコ関連メーカーの業績は、新型遊技機「スマートパチスロ」の登場により絶好調だ。

ホールは従来機からの仕様変更に伴い、電子データでの玉貸しに対応した専用ユニットが欠かせないため、ユニットメーカーに特需が到来。ゲームカード・ジョイコHDは今期、12期ぶりの最高益更新を見込んでいる。

実は2023年には、複数のパチンコ関連メーカーが矢継ぎ早にMSワラントの発行に動いた。2月に遊技機メーカーの藤商事が23億円、6月に大手ユニットメーカーのマースグループHDが72億円、12月にはユニットのOEMなどを手がけるマミヤ・オーピーが23億円の調達を想定し、それぞれMSワラントの発行を決めた。

業績が好調に推移する中で増資に踏み込んだ背景には、各社各様の複雑な事情が透ける。

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