パチンコ業界に異色の「増資ラッシュ」到来の深層 株価は大幅下落、業績絶好調のさなかになぜ?
藤商事に続いたのが、東証プライム上場のマースグループHDだ。ゲームカード・ジョイコHDと競合するユニットの大手メーカーで、こちらもスマスロ特需を謳歌した結果、2024年3月期は最終利益66億円(前期比109%増)と、19期ぶりの最高益更新を見込む。現預金200億円超、流動比率(流動資産÷流動負債)500%というキャッシュリッチ企業でもある。
マースグループHDは、製造拠点の再編などに向けた不動産取得やシナジーを見込める企業のM&Aのために、資金調達が必要だったとする。しかし、やはりこちらも「メインの狙いは、プライム上場企業として流通株式比率を上昇させること」(同社IR担当者)だったという。
ただ、新株予約権がすべて行使された場合の希薄化率は議決権ベースで15%となり、これに市場は敏感に反応した。MSワラントの発行を発表した翌営業日、マースグループHDの株価は16%下落。希薄化率が最大6%と見込む藤商事でも、同14%の株価下落を招き、こちらは2023年11月末時点でMSワラントの行使もゼロと成果がない状況だ。
火消しに追われたジョイコ
そんな中、3番目にMSワラントによる調達を発表したのがゲームカード・ジョイコHDだった。例にもれず流動比率600%、有利子負債ゼロと盤石の財務を誇るが、生体認証やスマホ連携といったパチンコホールの次世代決済システム開発などを使途に掲げた。希薄化率は最大17%となる。
発表の翌営業日、ゲームカード・ジョイコHDの株価は22%下落と、各社で最大の落ち幅となった。その後も株価は低迷し、同社は急きょ11月に機関投資家、12月に個人投資家に向けて説明会を実施するなど、火消しに追われる格好となった。
株価の大幅な下落は、業界2社の前例を踏まえれば想定の範囲に思える。ただ、個人投資家向け説明会で、ゲームカード・ジョイコHDの鈴木聡社長は「(株価が)短期的に下がった点は私の本意と少し異なる」と、足元の株価推移が想定外であるとの認識を示した。
同社の関係者によれば、社内の反対意見を鈴木社長が押し切り、今回の調達に至ったという。「これくらいの資金調達は、銀行などからの借り入れで難なくできたはず。認識の浅い鈴木社長に対し、証券会社側が自分たちの儲かるMSワラントをうまくやらせた、ということだろう」。
ゲームカード・ジョイコHDに続いたマミヤ・オーピーも、MSワラント発行を発表した翌営業日に株価が17%下落している。足元は特需に沸くパチンコ業界だが、中長期的に見れば斜陽産業であることは間違いない。増資発表前を超える水準に株価を戻す道のりは、そう簡単ではなさそうだ。
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