地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか

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株主がより看過できないのは、BPS(1株当たり純資産)希薄化の問題だろう。

9月末時点におけるトモニHDのBPSは1535円。一方、今回の公募増資では、前述の通り3220万株を発行して約112億円を調達する。1株当たりの調達額は、わずか約347円だ。株数の増加に純資産の増加が追いつかず、BPSは強烈に希薄化する。

希薄化を覚悟で強行した公募増資には、同業も首をかしげる。「トモニHDの自己資本比率は、決して低すぎる水準ではない。貸し出しを伸ばしたいとはいえ、資本増強を急ぐ必要性があったのだろうか」(四国地方の地銀幹部)。

調達資金は地元に還元されるのか

増資で調達した資金が、地元に還元されるかも未知数だ。近年のトモニHDの貸出残高を見ると、中核市場に据える香川・徳島両県が微増にとどまるのに対して、成長領域に位置付ける大阪や東京の伸びが著しい。

折しも、傘下の香川銀は10月に、都内で4カ店目となる品川支店を開設した。「地元のために存在する地銀が、地元ではなく大都市向け取引強化のために増資を行うように見える。それには違和感がある」(中国地方の地銀幹部)。

トモニHDの増資を引き受けたある証券会社の幹部は、「教科書的に言えば、(PBRが1倍割れの現状では)増資よりも自己株取得をすべきなのは確かだ」と認める。

一方、同幹部は「地銀の株主は地元の住民や企業が多い。増資を通じて一層成長し、より地域に貢献するという観点で理解を得たい」とも付け加えた。新たに発行される株式の多くは、トモニHDのおひざ元である四国地方の支店に配分されるもようだ。

調達資金が大都市の企業向け貸し出しに充当されるのでは、という指摘に対して、トモニHD幹部は「(東京や大阪は)マーケットが大きいことは事実。貸出金も大都市を中心に伸びるだろう。ただ、地元を軽視するつもりはない」と反論する。

四国地方でもビジネスマッチングなどを展開し、大都市圏で稼いだ収益を地元に還元することを描く。

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