2023年「4大不祥事」から見えた"日本企業の懸案" 日大、ビッグモーター、ジャニーズ、宝塚…

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スシローの運営会社「あきんどスシロー」は、迷惑行為を行った少年に対して損害賠償を求める訴えを提起、「くら寿司」に関しては、警察に被害届を提出、迷惑行為を行った顧客は逮捕されるに至った。

これまでは、「企業よりも顧客が偉い」という考え方が一般的で、顧客の行為に対して企業が法的手段を講じることに対しては風当たりも強かった。しかし、最近では企業側を支持する声が優勢となってきている。

もはや、企業は顧客の迷惑行為に泣き寝入りする必要もなくなっているし、むしろ毅然とした態度を取るほうが、支持を集める時代に変わってきている。

顕在化する企業の「コンプライアンス格差」

以上で述べてきた以外にも、情報漏洩、詐欺事件、セクハラ・パワハラ、売掛金を巡るトラブルなど、2023年はさまざまな不祥事が起こった。こうして見ていくと、日本の企業、その他の組織は、時代の流れに乗れていないだけでなく、むしろ退化してしまっているようにも見受けられる。

実際には、すべてがそうとまでは言い切れない側面もある。12月13日、アジア企業統治協会(ACGA)は、アジアの企業統治(コーポレートガバナンス:CG)を評価する「CGウォッチ2023」を公表。日本は前回(2020年)の5位から急伸し、1位のオーストラリアに次ぐ2位に上昇している。

この評価は、企業のコンプライアンスを評価したものではないが、世界市場で評価されるために日本の行政も企業もそれぞれ尽力していることは間違いない。

実際に、株価を見るとこれまで低迷してきた日本株は今年に入って上昇に転じている。日本企業がグローバル市場で見直され始めているようにも思える。

投資家、取引先、消費者のいずれにおいても、グローバルで評価されるためには、倫理基準もグローバル水準に揃えていく必要がある。

旧ジャニーズ事務所の性加害問題が、英BBCのドキュメンタリーで取り上げられたのがきっかけとなって国内でも問題化されたこと、その後、スポンサー(広告主)企業が相次いで所属タレントの起用を終了すると発表したことが象徴的だ。

多くの日本企業は、コンプライアンスをグローバル基準に合わせているし、そのための努力も行っている。一方で、今年に不祥事を起こしたような、企業や組織の中には、依然として組織内部の特殊な慣行や旧態依然とした価値観にとらわれている組織も多い。

言ってみれば、日本企業の間では「コンプライアンス格差」と言えるような現象が起こっていると言える。

2023年の一連の不祥事を見ると、コンプライアンス面の整備が遅れている企業も、もはやそのままではいられなくなっている――ということを示しているように見える。伝統や慣習を盾にして、変化を受け入れないという選択肢は、もはや取ることができなくなっていることは、肝に銘じておきたい。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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