先日出た、ある宴席でのこと。70代の経営者が、若い人々を相手に、こんな話を始めた。
「日本社会で成功する、たった1つの法則を知っているか」
講演にも呼ばれるこの経営者は、いつも、この1つのことを話すのだという。
「たった1つ? 何ですか」
社長はにやりと笑った。
「それは、本当のことを言わないことだ」
「えっ」
「心の中で、こうじゃないのかと思うだろ。でも、それを口に出しちゃいかん。そこをぐっと堪(こら)えられるかどうかで、ビジネスの世界では成否が決まる」
みな神妙な顔つきで聴いている。経営者は酒をすすりながら続ける。
「それを言っちゃあおしまいよ、ってやつだ。物事を丸く収めることが何より大事なのよ」
周囲の人が頷(うなず)いている。え、みんな同意しているのか。
私は戯(おど)けた調子で切り返した。
「そうなんすか。いやあ、私はまったく逆だと思ってました」
「はっ?」
「思っていることを言わないと、後で後悔するかなあって。それに、誰も本心を言わない状態って、危険ですよね」
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら