
(イラスト:北沢夕芸)
駅前商店街のパチンコ店が潰れた。
かつては駅の反対側にもう1店あった。私がまだ小さい頃、父に連れられてよく行った。
昔は、親がいればパチンコ店に入れたし、代打ちもできた。正式に許されていたわけではない。そもそも、この業界に「正式」という言葉は似合わない。なにせ、法的グレーゾーンが多い。
そのモヤモヤを吹き飛ばすように、大音量の軍艦マーチが、店の外まで響き渡っていた。ジャカジャカうるさいパチンコ台の音と、マイクを通したダミ声の「○番台大当たり!」というアナウンスが迫力満点だった。
これは、日常の「祭り」である。
高度成長の勢いそのままに、男たちはまるで工場のラインに就いているかのように、パチンコ台に向かった。「余暇」「レジャー」という言葉が定着する前の時代、休日に家族をほっぽり、タバコをくわえてパチンコ台に向かう。
そのパチンコ店が、ついに駅前から消えてしまった。
跡地にはドラッグストアが入居し、スーパーから流れてくるような音楽が聞こえる。
……寂しい、寂しすぎる。
あの勢いはどこに行ったんだ。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
ログイン(会員の方はこちら)
無料会員登録
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
トピックボードAD
有料会員限定記事
連載一覧
連載一覧はこちら
ログインはこちら