マツダ「CX-60」ラージ商品群第1弾が物議を醸す訳 大きいグレードごとの差、現状で推せるのは

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一方、これなら納得かなという印象を得たのがXDエクスクルーシブモード。MHEVなしの3.3LディーゼルのFR車だ。微低速域ではMHEVなし、しかもトルコンレスATということでドライバビリティにやや難があるが、中回転域以上の吹け上がりは気持ちがいい。走りは高速向きと言える。

好印象なのはシャシーだ。前述した上下方向の周期の速い揺れがだいぶ鳴りを潜め、落ち着いて乗っていられるのである。

実はCX-60、車重によってシャシーの設定を変えていて、このモデルはリアサスペンションに複数箇所使われているピロボールが一部ブッシュに置き換えられ、リアのアンチロールバーも撤廃されている。おかげで操舵感はやや甘め、姿勢変化も大きく感じられるが、SUVなのだからこれぐらいでいい。

現状のベストなグレードは

現状ベストかなと思ったのは、直列4気筒ガソリンエンジンを積む「25S Sパッケージ」のAWDだ。こちらもサスペンションは同様の設定で、18インチタイヤを履くこともあり乗り味はマイルド。重量バランスのよさなどもあって、FRベースのプラットフォームのよさがしっかり感じられて悪くない。

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エンジンも意外と物足りなさを感じさせないのは嬉しい誤算だった。車体がいいので、同じエンジンでも「CX-5」などに比べて静かだし、絶対的なトルクが小さい分、ATのショックも小さくマイルドな感触。ストレスなしに走らせることができる。

そうなると、じゃあ「25S Sパッケージ」のFRモデルは軽いし、もっと良いのではと思ったのだが、こちらは乗り味にどうにも落ち着きがない。

4WDに比べると軽く、駆動力もかかっていないフロントの抑えが利いていないようで、終始クルマが前後左右に揺れるし、一定速を保つための微妙なアクセルコントロールに対しても、いちいちピッチングが起きてしまう。ACC使用時すらそうなのだ。

そんな具合でグレードごとの差が結構大きく、ピンポイントでしかお勧めするのは難しいCX-60。さすがにマツダ社内でも何とかしようという動きにはなっているようだ。当初は年内と言われていた「CX-80」の発売延期も、理由は同じだと思われる。

クルマ好きの理想がほとばしり出たハードウェアにはつい肩入れしたくなってしまうところがあるし、走りにも光るところはある。そして何よりデザインが理屈抜きにカッコいいだけに、早期の熟成を期待したい。

現状は、まだ納得には程遠いが、しかし前向きに期待したいとは思っているのだ。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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