男子校の「残念な実態」描く漫画が注目される背景 少女漫画の中の男子校はリアル?<前編>
凹沢:私自身、人間がすごく小さいので「あ、コイツには勝てる」みたいなことをいつも考えています。それが主人公たちのキャラにも投影されているんだと思います。
おおた:男子校生の痛々しい実態と凹沢さんのキャラが化学反応してこの世界観がつくられているのですね。
辛酸:最上位の国立大志望の主人公たちが私立文系志願者に敵意を燃やすところとか。
凹沢:ある男子校に取材に行ったときに、私立文系コースだとカノジョがいる率が高くて、国立理系コースはカノジョいないみたいな話を聞いたんです。でも、超進学校という設定にしちゃったから、私の学力と違いすぎて、ネタをつくるのがつらいという状況になっています。
辛酸:一生カレシができない確率を求める数式とか。
凹沢:あれは大学の教授が統計学の参考書で書かれていたもので、ご本人の了承を得て使わせてもらいました。
辛酸:主人公がいきなり漢詩を暗唱し始めたり。
凹沢:学歴ネタをよく書く作家さんの作品の中に中国の科挙をパロディーしたものがあって、とても面白かったので、真似してみました。
ほとんどのひとは男子校の実態を知らない
おおた:主人公に絡む女子にも中学受験の洗礼を受けてきたようなキャラがいて、彼らに共通するのが、なんでもかんでも頭で分析して予測して損得勘定するというクセですよね。
辛酸:恋愛も受験にたとえて考えちゃったり。
おおた:そうそう。そんなことやってると生きづらいぞ、みたいな。
凹沢:いま指摘されてその通りだと思いました!
おおた:たとえば「四葉女学院」に通う女の子のキャラは、そうとうこじれてますよね。
辛酸:好きなひとの前ですごい怖い顔をしちゃうクセがある子ですよね。でも、雨の放課後のファミレスのシーンはすごく青春で羨ましかったです。
おおた:あのシーンを読んでいて、「あのときもうちょっと押せば良かったのかな?」なんて、つい30年以上も昔の自分に重ねちゃってる自分がおかしかったです。
凹沢:でもやっぱり男子校って憧れちゃいます。みんなすごく楽しそうなんですよ。みんな自分の趣味みたいなものを極めてますよね。モンゴル語をやってますとかカエルの研究をしてますとか。
辛酸:武蔵でヤギの鳴き声を解析するひとも良かったですね。
おおた:異性のグループがいない環境だからこそ、異性からどう見られるかということを度外視で、自分の好きなことに打ち込める。
辛酸:それは女子校も同じかもしれないです。
凹沢:学校のヒエラルキーって、勉強とスポーツとモテで決まるじゃないですか。でも男子校だとモテの要素がない。そのおかげですごく自由になれるんだと思います。
辛酸:女子校だとオシャレという観点もありました。