男子校の「残念な実態」描く漫画が注目される背景 少女漫画の中の男子校はリアル?<前編>

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凹沢:お母さんたちからしたら、体育祭なんてまさに秘密の花園に足を踏み入れてる感覚で、はしゃいじゃうのかもしれないですね。自分の息子が名門校に受かったおかげで、特権的に覗けてるわけで。

辛酸:実際、男子校にはイケメンって多いんですか?

おおた:男子校だから多いということはないと思います。ちょっと補足しておくと、男子校出身者って、大学に入って二極化するんですよ。いつまでも女性と話せない奥手か、ガンガン行きすぎてしまう遊び人になるか。いずれにしても異性との適切な距離感を学ぶまでちょっと時間がかかる。

凹沢:男子校の陰キャが有名大に入った瞬間に弾けるってありますよね。

辛酸:ロンダリングチャラ男。

本作のヒロイン・黒木ちほねの偏見。男子校の抑圧から解き放たれて、大学で弾けてしまう人も中にはいる…のかも?(画像:「かしこい男は恋しかしない」)

おおた:こういう話をしていると、「男子校出身でもみんな結婚できてるから大丈夫」という反論があるんですけど、それもちょっと危険な論理で。

凹沢:というと?

男子校のアキレス腱とは?

おおた:どんな奥手でも、好きなひとができればそのひとなりに頑張ってコミュニケーションとるし、不器用なりに愛情表現はできるんです。世の中広いから、誰かしらとは愛し合える。そういう意味では男子校出身でも大丈夫。

でも本当の問題は、恋愛対象以外の約40億人の女性と、性別を超えた爽やかな関係性がもてるかなんです。そこはジェンダー教育なり、女子校との共同プロジェクトみたいなことで経験値を積まないと、社会に出てから大きな問題の種になる。そこを男子校のアキレス腱と僕は呼んでいるんです。

辛酸:恋愛対象になるかならないかって点で相手を区別しちゃうこともありそうです。なんていうか、目の焦点が合わないんですよ……。

凹沢:主人公たちの問題点は、女子との付き合いって、恋愛しかないと思ってるところかもしれないですね。

『かしこい男は恋しかしない 1』(集英社ガールズコミックス)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

辛酸:共学出身のひとは、男子に「○○くん!」みたいな感じで自然にフレンドリーに接していて、羨ましいなと思ったことがあります。

おおた:だから男子校と女子校は積極的にコラボして、探究の授業とかを共同で進めるみたいな機会を設けたほうがいい。

凹沢:実際にやっている学校がいくつかありますよね。

おおた:毎日ともに生活しているわけではないけれど、何かのプロジェクトを推進するためならいつでも性別を超えたコミュニケーションができる。そういうスキルを中高生のうちに身につけられるなら、アキレス腱はかなり補強できるはずです。

後編:『全国に2%程しかない「男子校」の知られざる現実

凹沢 みなみ 漫画家

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おうさわみなみ / Minami Osawa

「別冊マーガレット」で「かしこい男は恋しかしない」を連載中。

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辛酸 なめ子 漫画家、コラムニスト

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しんさん なめこ / Nameko Shinsan

東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)『おしゃ修行』(双葉社)『魂活道場』(学研)など。

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おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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