東大生断言「教えないほうが成績上がる」その真意 塾にも通わせているのになぜ成績は伸びない?

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結局先生がどんなにいい授業・わかりやすい授業をしたとしても、それを受ける生徒が家に帰ってからその授業を咀嚼したり復習したりする時間がないと、成績は伸び悩んでしまうんですね。

これを象徴するような話として、「自称進学校のジレンマ」というものがあります。

生徒の成績を上げるために、普段から先生が熱意を持って生徒指導をしていて、かなり強い口調で「この学校は進学校だから、サボらずに勉強をするんだ!」と言い、課題や授業の数が他の学校に比べてかなり多い学校のことを、「自称進学校」と揶揄する風潮があります。そう揶揄される学校であればあるほど、逆に生徒の成績が伸び悩む場合がある、という話です。

アウトプットの時間が足りない

なぜこんなことが起こるかというと、メカニズムは簡単です。

先生が熱意を持っているので、こうした学校では「放課後にも講習をやろう」「もっと授業を増やそう」と、生徒に教える時間を伸ばす傾向にあります。

「平日も夜まで授業をしよう」「土曜日もみっちり勉強を教えよう」と、どんどん授業の時間が増えていって、生徒はインプットの時間が長くなっていきます。人の話を聞く時間ばかりが取られるようになって、アウトプットや復習の時間が取れなくなってしまいます。そうすると、いくらいい授業を聞いていたとしても消化不良で終わってしまい、普通よりも成績が下がってしまうのです。

これは、親御さんが勉強を教えている場合も同様です。どんなに親御さんの頭がよくていい授業ができる場合でも、子どもの自習の時間が減れば、当たり前のように成績は下がります。

親御さんが熱心に勉強を教えれば教えるほど、子どもはアウトプットの時間が取れず、勉強の成績が下がってしまうのです。

同じように、塾に通っている生徒の中でも、熱意のある生徒のほうが、なぜか成績が下がってしまう場合があります。意欲があるので塾の授業を取りまくり、真面目に授業を聞いてはいるのですが、授業数が多くてアウトプットや復習の時間が取れなくなってしまい、塾に通っていないときよりも成績を下げてしまう場合があるのです。

こうした現象の話を聞くと、「授業を聞くと、頭がよくなる」は必ずしも「○」ではないということがわかってもらえるのではないでしょうか?

さらに言えば、教わる時間が長くなれば長くなるほど、子どもたちは「答えを覚える勉強」が主眼になってしまいます。

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