東大生断言「教えないほうが成績上がる」その真意 塾にも通わせているのになぜ成績は伸びない?

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授業では、多くの先生たちは「こういう問題にはこう対処するんだ」「こう聞かれたらこう答えるんだ」という指導を行います。

そうすると、「Aという問題にはBと答えるんだな」と、知識として答えを暗記する勉強が主になっていきます。こうなると、「A」という問題が応用されて出題された「A`」の問題には対処できないんですよね。

例えば、こんな話があります。1×1〜9×9の、81個の計算を覚える「九九」ですが、この九九を、「いいか、7×8は56だぞ!」と親や先生が細かく指導し、他人がバックアップして覚える経験をした子は、他の子に比べて早く九九を暗記できます。

しかし「じゃあ、70×8は?」というように、九九を応用した問題に対しては、即答できず「覚えてない」「紙に書いて計算する!」と言ってしまう場合が多くなるのだそうです。細かく「こう来たらこうだぞ!」と教わりすぎて、逆に自分の頭で応用する力が衰えてしまうわけです。

自分で考える時間をつくることが大事

これはもちろん、本質を教えず子どもに暗記をさせてしまう、指導の仕方自体が悪かったということもあるのだと思いますが、「えっと、7個のものが8セットあったら……56個か」「7個のものが7セットあったときは49個で、それに7個足した状態ってことか」というように、本人が自分の頭の中で考える時間を取ってあげることも重要なのです。

「教えすぎる」と成績が下がるため、自分で考える時間=自習の時間を取らないといけないというわけです。

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「うちの子、成績がなかなか上がらないんです。塾にも通わせて、学校の先生も熱心に指導してくださっているのに……。やっぱり、地頭が悪いんでしょうか?」

というふうに悩んだら、その子が今どれくらい自習の時間を作れているのかを考えてあげる必要があります。

塾や授業を詰め込みすぎているのであれば、あえてその時間を減らしてあげることも有効な手立てなのかもしれません。

西岡 壱誠 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当

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にしおか いっせい / Issei Nishioka

1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「独学術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たす。

そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。

著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大独学』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計40万部のベストセラーになった。

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