吐き気、頭痛…二日酔いに効くタイプ別漢方薬3種 肝臓のダメージを軽減するが、飲みすぎに注意

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続いて、五苓散についてです。

飲酒により体に生じた熱が胃におよぶと、胃炎を起こしやすい状態になります。機能が低下した胃は、飲食物を下(腸)へと送ることができなくなります。そして、胃の気が逆向きに噴射すると、悪心・嘔吐が起こります。さらに熱の影響が腸におよぶと、水分の吸収が追い付かず、下痢をしやすくなります。

暴飲による水分バランスの乱れに五苓散

体が重だるい、むくむ、頭が重い、頭が痛い、めまいや立ちくらみ、気持ち悪いといった症状がある、あるいは口が渇いて水を飲む割にはトイレに行く回数が少ないといった状態を、漢方では「水滞(すいたい)」、または「水毒(すいどく)」と呼びます。

これは、体の中の水分が過剰になっていたり、偏って存在していたりする状態です。その水をさばいて偏在をなくすのが「利水剤」です。

漢方の利水剤が西洋薬の利尿薬と違うのは、必要以上に水を出してしまわない点にあります。ただ水を出しまくるのではなく、体内の水分バランスを適正化し、不要なら排泄し、脱水によって不足しているときには体に水を留めるように働きます。

利水剤の代表格である五苓散は、熱中症などによる脱水時にも有効です。ほか漢方で「霍乱(かくらん)病」に分類される、吐いて下痢する病気(ノロウイルスや嘔吐下痢症をはじめとする感染症)の際に処方されることも多いです。

二日酔いの場合は、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドという毒を体外に出すために水が必要になります。喉が渇いて水をガブガブと飲むわけですが、その余剰分の水により二日酔いの不快な症状が表れます。

特に、もともと体内の水分バランスが偏っていて、体質的に水はけが悪く、「口は渇いているのに、足はむくんでいる」「低気圧になると具合が悪くなる」といった人の二日酔いには五苓散がよく効きます。

五苓散は、沢瀉(たくしゃ)、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)、桂皮(けいひ)の5つの生薬から成る漢方薬です。桂皮の仲間はスパイスのシナモンで、気の流れを調整する生薬ですが、残り4種類はすべて利水作用がある生薬です。

五苓散の効能のむくみや口渇、下痢、嘔吐、排尿困難は、まさに二日酔いのときにありがちな症状です。そんなときに五苓散を服用すると、トイレが近くなり、どんどん尿が出てむくみが解消します。また口の渇きも徐々に治まっていき、体がすっきり軽くなります。

五苓散によって体内の水の偏在が解消して、水分バランスが整うのです。

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