渋谷がもはや「若者の街」じゃなくなった深い理由 むしろ「若者が集う場所」はつねに変遷してきた
こうした流れを決定づけたのがコロナ禍であろう。そもそもリアルな街に出ること自体を禁じられ、全世界的にネット世界の普段使いが広がった現在、リアルな街に対する需要が低下していると言わざるをえない。
2つ目の、渋谷という街自体の変化については、2010年から2020年にかけての渋谷の再開発が大きな影響を及ぼしている。この10年の間に渋谷には、渋谷ヒカリエ(2012年)、渋谷ストリーム(2018年)、渋谷スクランブルスクエア(2019年)、渋谷フクラス(2019年)が誕生。それぞれ、オフィスビルが入居している場合が多く、それに合わせてこうしたビルのテナントも、30〜40代を対象とするハイブランドが多くなった。こうした再開発が、若年層を渋谷から遠ざけているのだろう。
渋谷に訪れた人がつねに持つ印象として「ずっと工事をしているな、この街……」ということがある。本当に、いつ訪れても、どこかしらが白いフェンスに覆われているのである。
かつて、浅草が関東大震災によって壊滅した結果、若者が集う街が銀座へと変化したというのは先にも書いたとおりだが、渋谷の再開発もまた、ある意味ではそれぐらい、根本的に街を変えてしまうようなインパクトを持っていると思える。
この2つの要因が合わさって、渋谷という街は変化を余儀なくされたのだと筆者には思われる。
渋谷から消えた若者はどこへ行ったのか
では、渋谷から姿を消した若者たちはいったいどこにいるのだろうか。新宿から渋谷へ、という流れを描いてきた若者の流れについて最後に私が考えている見取り図を提示してみよう。
筆者が東京を散歩していて若者が多いと感じるのは、例えば新大久保や下北沢、三軒茶屋のような副都心周辺エリア、あるいは清澄白河・門前仲町といった東東京エリアである。
これらの街に共通している点は2つある。
1つ目は街としてのスケールが小さいことである。渋谷や新宿のように大きい通りや大きい建物がある街とは異なり、街全体が小さい路地のような道で構成され、こぢんまりとした雰囲気を持っている。人間のスケール感にマッチした街だということもできるかもしれない。全体としては「大」から「小」へ、といった街への志向が表れているとも分析できるだろう。
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