渋谷がもはや「若者の街」じゃなくなった深い理由 むしろ「若者が集う場所」はつねに変遷してきた

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2つ目の共通点についてだが、これらの街のほとんどは、若者が多く住む街でもあるということである。とくに東東京エリアは東京スカイツリー開業以後、若者が多く住むようになったことでも有名だ。

これは何を意味するか。つまり、若者が「地元」からあまり動かなくなったということではないか。

すでに一部の若者に「地元志向」が強く見られることはこれまで語られてきた。ましてや、現在はアフターコロナの時代で、人類史上に例を見ないほどに「家」という場所が重要になっている時代である。「地元志向」の高まりは過去に例を見ないほどだろう。

渋谷にも「地元感覚」で若者が集まる場所がある

実は、以上の文脈でいえば、渋谷の中にも若者が集まる場所がないわけではない。

すっかりおじさんの街と化したと言われる渋谷だが、「MIYASHITA PARK」の飲食街のように、若者で混雑するエリアもある(筆者撮影)

例えば、2020年に誕生した「MIYASHITA PARK」にある「食とエンターテインメントの融合施設」である「渋谷横丁」などは若年層の利用も多いように見受けられる。擬似的にせよ、「横丁」とは表通りから横に入った細い道のことを示すのであり、「小」への志向性が感じられる。

加えて、同じ「MIYASHITA PARK」のフードコートには地元の高校生たちが多くたむろしている。「地元感覚」で「MIYASHITA PARK」を使っているのだろう。

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渋谷を軸としながら、若者の街の変遷について考えてきた。何度も言うように、若者が集う街はさまざまな要因によって変遷し続けているのであり、これからも変遷を続けるに違いない。

とくに渋谷については、「若者の街でなくなった」から、渋谷が街としては見所がなくなってしまった、と考えるのは拙速だ。この記事で語ってきたとおり、それは渋谷という街の人生の一部分でしかないからだ。

むしろ、渋谷の終焉を嘆くよりも、さまざまな外的要因によって変わっていく渋谷が今後、どのようなイメージを持つ街へと変貌していくのか、それを的確に見つめることが重要なのではないだろうか。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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