私自身にとっても、毎朝お茶をいれることは大切な作務のひとつです。敷地内の井戸から朝一番で水をくみあげ、お湯を沸かして仏様の数だけお茶をいれます。
そしてご本尊様をはじめ、すべての仏様一体ずつにお参りしながらお茶を差し上げるのです。もっとも香りの高い一番茶を、仏様に楽しんでいただくことが私の大切な朝のお勤めですから、心を込めてお茶をいれています。
安土桃山時代の茶人・千利休は「茶の湯とは、ただ湯を沸かし、茶をたてて飲むばかりなるものとこそ知れ」と言いました。
つまり、茶の湯はただひたすらに湯を沸かし、ただひたすらにお茶をたて、ただひたすらに飲む、それだけなのだといっているのです。これはお茶にかかわるすべての工程を、できうる限り丁寧におこないなさいということだと私は思っています。
ゆっくり火を入れたお湯は甘くまろやか
まず大切にしたいのは、お湯の温度です。お茶はその種類によって、茶葉のうまみがほどよく溶けだす適温があります。煎茶は70~80度、玉露は50~60度ですから、いったん沸かしたお湯が冷めるまで待たなくてはいけません。
一方、ほうじ茶や玄米茶は沸騰したお湯でいれると香りが引き立ちます。急須には適量の茶葉を入れ、適温のお湯を注ぎます。ほうじ茶や玄米茶は30秒ほどで飲み頃になりますが、煎茶は1~2分、玉露は2~3分待たなくてはいけません。
急須は静かに持ち上げて、すべての茶わんに少しずつお茶を注ぎます。5つの茶わんがあれば、急須のお茶は10分の1ずつ注いでいくのです。5つ目の茶わんにお茶を注いだら、今来た道を戻るように残りを注ぎます。
これですべての茶わんのお茶が同じ濃さになるというわけです。最後に数滴落ちてくるお茶は、濃くておいしいところ。これも5つの茶わんに均等に注ぎます。急須を振ってはいけません、苦味が出てしまいます。
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