「次期装輪装甲車」選定に見る防衛予算の無駄遣い 国内生産で単価高騰、浪費される防衛費の実態

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ベンダーとしてはコマツの下請け企業群が担当するらしいが、少量であれば価格は高騰する。

また国内生産とはいうが、どの程度までコンポーネントを内製化するのかも明らかになっていない。部品を輸入して組み立てるのはアッセンブリー生産と呼ばれて、国内でコンポーネントを内製化して生産するものをライセンス生産と呼ぶ。

近年、国内生産は調達数が少ないこともあり、アッセンブリー生産が多い。だが、価格はオリジナルの2~3倍以上に上る事が多い。しかも単なる組み立てなので、技術移転は期待できない。国内企業に金が落ちるものの、国内生産は単に調達単価を押し上げるだけとなっている。

装備庁の「経費についてはAMVが優位」との判断がいかにいい加減かおわかりになるだろう。

諸外国に比べて3倍程度は価格が高いのが当たり前

そもそも、AMVの代理店であるNTKインターナショナル社は小規模な専門商社であり、装甲車両関連の実績もない。年に数百億円となる調達を担当するのも無理があった。おそらくパトリア社にとって今回の入札は日本市場参入のために経験を積むつもりで、契約が取れるとは思っていなかったのではないだろうか。

このためAMV採用が決まってから防衛大手の住商エアロシステムが関わって、その後、日本製鋼所が製造を担当することが決まった。泥縄としか言いようがない。

装備庁や陸幕は国内生産企業が決まっていない段階で、AMVを選定から外すべきだった。だが生産企業が定まらないまま、コストや整備性などが優良であると判断したのだ。

これは防衛産業政策上も大変問題がある。わが国では装甲車メーカーは三菱重工、コマツ、そして日立が存在するが、国内市場の規模に対してプレーヤーが過剰だった。

そのメーカーを食わせるため少量発注せざるをえず、諸外国に比べて3倍程度は価格が高いのが当たり前という状態であった。コマツが近年やっと撤退して2社になったのに、新たに装甲車メーカーが登場することになる。これでは防衛産業基盤の強化などできるわけもない。

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