「次期装輪装甲車」選定に見る防衛予算の無駄遣い 国内生産で単価高騰、浪費される防衛費の実態

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AMV自体は優れた装甲車で多くの採用実績もあり、車種の選定自体には問題がない。AMVを見聞した複数の将官らは、国産装甲車はこれに比べて「月とスッポンである」と評したという。

実際のところ日本の装甲車のレベルは低く、1980年代ぐらいで技術は止まっている。すでにトルコやシンガポール、UAE(アラブ首長国連邦)、韓国などのほうが先進的で高性能の装甲車を開発している。その事実を装備庁や陸幕は認識、把握できていない。

AMVは南アでもバジャーの名前で採用されている(著者撮影)

陸幕は高脅威に備えるための8輪装甲車を高性能、高価格の「共通戦術車」とし、三菱重工のMAVを採用した。「次期装輪装甲車」はこれを補完すべきより低い脅威度の環境で使用する安価なものになるはずだった。つまりハイ・ローミックスでトータルのコストを抑えようというものだ。

だがAMVのほうがMAVよりも生存性、性能もはるかに高い格上の装甲車である。同じクラスの8輪装甲車を2種類揃えたことになる。

輸入を選択すべきだった

調達および運用コスト、メーカー再編、すぐれた装備の導入という観点からみればAMVは妥当な選択だったが、これを採用するならば輸入を選択すべきだった。完成品を輸入し、無線機の装着などの自衛隊仕様のための改修と整備だけを国内企業が担当すべきだった。

このまま何も考えずに国内でライセンス生産を始めれば、多額の初度費用がかかる。また「防衛産業振興のため」、量産効果のでない国産コンポーネントを多用すれば、ライフ・サイクル・コストは高騰する。他国の何倍も高いコストでAMVを導入することになり、それは今後の予算を圧迫することになるだろう。

防衛費の大幅増額はこのような粗雑なプロジェクトで税金を浪費するためのものではないはずだ。このようないい加減な調達を続けていけば、防衛費の大幅増額は世論の支持を得られなくなるだろう。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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