ヤマト運輸の大幅遅延に「私たちができること」 物流2024年問題を前に消費者側の努力も重要だ

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想像してほしいのだが、工場から工場に大型プレス部品が運ばれていたところ、日本は脱ものづくりを志向し、それらの配送品は減った。残ったのは(言葉が悪いが)儲からない、小物のEC物流のみだった、というわけだ。

物流の打開案(個人と企業)

ここで話を整理すると、「企業間の大きな利益になる物流は減少」「EC市場の個人は増加」となる。そこで、この状況を踏まえたうえで、読者の企業・個人で対応できる施策を提案したい。

【企業編】

物事を解決しようと思えば、もっとも大きな問題を解決せねばならない。企業間物流で何が問題か。納品のときに、待たされるのが問題となっている。たとえば、12時に納品しろと物流業者が依頼される。でも、少し早く到着した。ただし、それでも納品させてくれない。だから、有名企業の前では、トラックの行列が生じている。

先日、聞いて笑ってしまったのだが、某有名企業は物流業者に「ウチの前で待たないでほしい。社会的に叩かれるから」とお願いしたら、その近くの公園にトラックが集合するようになったそうだ。どちらにしても迷惑だ。

だから企業人は、できるだけトラックを待ち時間なく受け入れること。ただ、契約においてジャスト・インで納品することになっているケースがあるだろう。その場合は企業人だけではどうしようもない。

だから、私がいつも提案しているのは、「企業別の待ち時間の公開」だ。これは事実として、納品するときに、どの企業にどれくらい待ったか、物流業者からヒアリングして公開するといい。昨今はドライブレコーダーで録画しているだろうし、あくまで事実として待ち時間を集計して行政が公開するのだ。おそらく、事実とはいえ、改善する企業が多くなるはずだ。

【個人編】

コロナ禍の前、アメリカの物流業者と話して驚いた。配送のときに、アメリカの家庭に荷物をぶん投げている。苦情が来ないのだろうか。ほとんどこない。しかし、来るケースもある。ただ、そのときに対応すればいいし、配送のまずさで商品が故障したら、交換すればいい。この合理的な態度に感動したものだ。

これは盗難も同じだ。置き配を、もっと拡大すればいい。そして、日本のネットメディアには、置き配をすることで盗難の可能性があると指摘するものがある。それは当然だ。では、盗難されたら、そこで新品を配送したらいい。あるいは、盗難が頻繁に確認されたら、その場合に限って、その地域は置き配をやめる、などといった合理的な判断が求められる。

そして、個人としてできることを列記しておこう。

・再配達の回避:指定された日と時間には必ずいるようにしよう。これだけで相当数の手間は減る。

・置き配やポスト投函の増加:置き配でお願いしたり、ポスト投函を増やしたりしよう。ほとんど意味がないのに、サインを要求する配送のお願いは多い。サインを要求しなくても十分なのに、受け手にも配送側にも負担をかけているケースがある。

・配送業者に感謝を伝達:実は数年前なら、私はこんなことは書かなかったと思う。しかし、現実的に配達してくれた人と話すと「感謝されなかったら、やってられないっすよ」と何度か言われた。ということは、もしかすると、私たちができる、最大の物流持続策は「ありがとうございました!」と心を込めて述べることかもしれない。

たぶん、相当数の方が幼稚なことを言うな、とお怒りかもしれない。でも、私は真剣に言っている。今度、みなさんの会社や家庭に来てくれた物流業者に感謝を伝えてみないだろうか? 「ほんとうにありがとうございました」と言うだけで、多くの物流業者を救うだろう。これは本気である。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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