いい、ばば…「同音重ねる地名」調べてわかる面白さ 「おお」「かか」「きき」「ヌヌ」など多数、由来は?

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「てて」は鹿児島県徳之島町手々で、こちらは手がふたつだから珍しい。『角川』によれば「地名は天城岳連山に続く高頂など4岳の岳岳(てて)にちなむ」とある。

わかりにくいが、山の頂(岳)を奄美方言で「て」と呼び、それに手の字を当てたらしい。近いところでは沖永良部島(おきのえらぶじま)の手々知名(てでちな)も「岳(てえ)にある火田[焼畑]」というから、共通の地名だろう。

鹿児島県・徳之島の最北端に位置する手々の集落。天城の連山が岳岳(てて)で、地名はこれに由来するという。1:50,000「山」平成3年編集*図名は「さん」と読む「難読」地名

濁点が付いているものでは滋賀県大津市の膳所(ぜぜ)。昭和8年(1933)まで大津市とは別の膳所町という自治体であったが、江戸期の城下町で、県都でもないのに滋賀県第二尋常中学校が置かれた(第一は彦根)。現在の県立膳所高校である。

北海道にある「ヌヌ」の由来

珍しいのはカタカナ2字の「ヌヌ」という地名。摩周湖を擁する北海道弟子屈(てしかが)町にあるが、これは北見・釧路地方のアイヌ語で温泉(ヌー)に由来するという。

『地名散歩 地図に隠された歴史をたどる』(角川新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

もうひとつアイヌ語では美々(びび)が千歳市にある。アイヌ語のペッペッ(川また川)あるいはペペ(水また水)に由来するというが、新千歳空港のすぐ東側で、かつてはJR千歳線に美々駅もあったが、乗客が1日わずか1人で平成29年(2017)に廃止、信号場となった。

同じ音がふたつの地名で最も多いのが「ばば」(馬場)である。これは説明の必要もないだろう。「のの」は兵庫県相生市若狭野町野々(村時代は野々村だったので珍しくない)、「まま」は高知市万々と千葉県市川市真間で、ママといえば崖を意味する古語だ。

「みみ」は倉吉市耳である。ここへは珍しい地名を雑誌に連載していた20年ほど前に行ったが、耳の病に効験ある「弥勒(みろく)様」が「みみろくさん」に転訛し、やがて耳の地名になったという。

私がその弥勒堂を訪れたのはお彼岸の中日で、堂内は酒盛りの最中。私も弥勒様に供えられた赤飯のお相伴にあずかった。あの時に地名の由来を聞いた爺さんは元気だろうか。

今尾 恵介 地図研究家

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いまお けいすけ / Keisuke Imao

地図研究家。1959年横浜市生まれ。明治大学文学部ドイツ文学専攻中退。(一財)日本地図センター客員研究員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査などを務める。『地図マニア 空想の旅』(集英社インターナショナル、第2 回斎藤茂太賞受賞)、『今尾恵介責任編集 地図と鉄道』(編著、洋泉社、第43 回交通図書賞受賞)、『日本200 年地図』(監修、河出書房新社、第13回日本地図学会学会賞作品・出版賞受賞)、『地名崩壊』『地名散歩』(どちらも角川新書)、『地図帳の深読み』(帝国書院)、『地図バカ』(中公新書ラクレ)、など地図や地形、鉄道に関する著作多数。

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