無印良品が過疎地で「移動販売」を続ける意味 無印良品はいかに「土着化」しているか(3)

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無印良品会長の金井政明がこんな話をしてくれたことがある。

無印良品が展開する「MUJI HOTEL」が順調に回り始めたとき、新型コロナ下で業績がよくない大手ホテルグループが提携を申し込んできた。うまくいけば、無印のホテルを一気に全国展開できる絶好の機会だ。 

ある東北の自治体が、無印に宿泊施設の進出を求めてきた。早速、提携予定のホテルグループと共同進出を協議することにした。だが、ホテルグループによると、この案件は縛りが多く、地方の業者や団体を使わなければならない、これでは、あまり儲からないという報告を受けた。

これに対して、「地元と協力するのは結構なことじゃないですか。地方が潤わないような事業はしません」と金井は告げた。結局、このホテルグループとの提携の話は、すべてなくなったが、これは無印良品の地方進出に対する姿勢をよく示している。

良品計画は、2030年には日本の津々浦々に、さらに1000店舗作ることを予定している。人が減り市場の大きくない地方は、各地で風土や歴史、成り立ちが異なる。そこに向かう無印良品の若手たちは、それぞれにふさわしい個店経営ができるのだろうか。簡単ではないだろうが、地方への「入り方」はこれまで紹介してきたとおり、方法がないわけではない。

小売業が半分になったとき、生き残るのは

バブル経済に浮かれる日本に「そぎ落とした美しさ」で時代のアンチテーゼとして登場した無印良品。そのコンセプトやデザイン性は人々を惹きつけ、1989年設立の良品計画はわずか10年で営業収益は約4倍に、営業利益は55倍近くになる。ところが、当時のセゾングループに共通のクリエイティブの追求に走りすぎ経営は迷走してしまった。

だがその後、松井忠三元会長が店舗オペレーションの効率化と、発注・在庫管理・コスト削減による利益の出るビジネスモデルの確立し、財務状況は好転。松崎元副会長が海外戦略のビジネスモデルを作り上げ、グローバルでも稼げるようになった。また、値下げによって店舗あたりの来客数が増えたと同時に、地方の消費者にとっても手に取りやすいブランドとなり、土着が可能になった。

目下、堂前社長は地方における密着化と、地元スーパーに離接する店舗のさらなる拡大に取り組んでいる。これを可能にしているのは、各地方のコミュニティ・マネジャーを中心とした「個店経営」だ。3回にわたり紹介した、土着化の取り組みのように、少しずつ地域に溶け込み、なくてはならない存在になることを狙っている。

金井はこう話す。「これから日本の人口は6000万人に減ります。小売業は今の半分がなくなります。その時に、生き残っているのは、どんなお店でしょうか」。

中谷 安男 法政大学経済学部教授、国際ビジネスコミュニケーション学会理事

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なかたに やすお / Yasuo Nakatani

慶應義塾大学経済学部卒業。米国ジョージタウン大学大学院英語教授法資格。豪州マッコーリー大学大学院修士号取得。英国バーミンガム大学大学院博士号取得。オックスフォード大学客員研究員。Journal of Business Communication及びApplied Linguistics主要ジャーナル査読委員、University College of London、EPPI‐Centre Systematic Review社会科学分野担当、豪州University of Queensland、ニュージーランドMassey University博士課程外部審査委員。

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