無印が過疎地のビルで「3フロア借り上げた」結果 無印良品はいかに「土着化」しているか(2)

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無印良品
函館西部地区の青柳町で行っている訪問販売(写真:筆者撮影)

店舗拡大を進める一方で、出店する各地域で「コミュニティ・マネジャー」を設け、地元と交流しながら「個店経営」を進めている無印良品。本稿では、その成功事例の1つとなった新潟・直江津の店舗、そして、地元のリーダーとタッグを組んだ北海道・函館のコミュニティ・マネジャーたちがいかに地元の課題に寄り添いながらそれを「商い」に変えたかという事例を見ていきたい。

「もの」より「こと」が大事

かつてテナントだったイトーヨーカ堂の後に入り、世界最大規模の店舗となった直江津を任された古谷信人は、自分で口下手というように、地域の会合に出かけても、皆の言うことにずっと耳を傾けている。そして話が行き詰まり意見を求められると、解決案を話し始める。

京都から赴任してきた古谷だが、こうした話を聞く姿勢が好感を持たれ、徐々にコミュニティの一員として頼りにされるようになっていく。困りごとがあると、彼の考えを聞く人も出てきた。

直江津店をオープンする直前にも地元の高校の先生が古谷に相談を持ちかけた。

「せっかく無印良品ができるので、卒業の思い出になる物を贈りたい」との相談だった。無印のボールペンに卒業記念を刻んで渡すといった案が出された。

古谷は、よく話を聞いたうえで生徒の立場で考えた。彼らの中には、卒業後に進学や就職で上越を離れる生徒も少なくない。無印のペンを贈られて本当にうれしいだろうか。物珍しいので、しばらくは持っているかもしれない。

「もの」より「こと」が大切だと古谷は思った。地方の過疎化の1つの理由は、若者が地元を離れて都会に住みつくことである。もし、若いときに体験した故郷での感動を覚えていれば、いつか戻って来たくなるかもしれない。

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