無印が過疎地のビルで「3フロア借り上げた」結果 無印良品はいかに「土着化」しているか(2)
つまりは、ビジネスと地域活動を両立させるという負荷の高い業務である。無印良品シエスタハコダテでは加瀬紋子に白羽の矢が立った。彼女はそれまで東京・渋谷のパルコで勤務し、北海道や東北の店舗の統括もしてきた。また、コロナ前にはオーストラリア店も担当した経験を持つ。
シエスタハコダテの土着化
加瀬は地域振興に取り組む岡本と連携を密にする。その中で実現したのが、函館西部地区の青柳町の訪問販売である。
高齢化の進む青柳町会はメンバーが減り、若い人は町会館に立ち寄らない。そこで、若手の会長と共に岡本が副会長になり、世代間を超えた交流を始めた。目玉の1つが、2021年11月からの無印良品の訪問販売である。
かつて漁港や港町として栄えた青柳町も高齢化が進み、買い物のできる店も近所に少ない。特に坂の多い地域なので、積雪時は、お年寄りの移動は難しい。買い物難民と言われる状況である。
このため月に1度、えんじ色の「MUJI to Go」のミニバスの到着を地元の人は心待ちにしている。当初は無印良品だけが出店していたが、函館の他の商店にも声をかけ参加者を広げていった。毎月の訪問が定着すると、プラットホームができ、そこに気軽に出店しやすくなる。2022年7月には、鮮魚店や八百屋も出店していた。
入り口で受付をしていたのは岡本だった。皆、和気あいあいと交流しており、そこには確かにコミュニティがあった。
9月には、函館市と良品計画との地域の活性化に関する連携協定が結ばれた。今は行政とも協力し、地元の人々と元気な街づくりを目指しているという。
2023年9月にシエスタをのぞいてみると、若者であふれていた。今年の函館は例年になく暑かった。涼と交流を求めて彼らはここに集っていたのだ。
次回は無印の店舗すらなかった山形県酒田市での奮闘を伝える。
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