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「薬不足」でも薬価が下げ続けられる構造的な背景 2024年は診療報酬・介護報酬のダブル改定年

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2024年は、6年に一度の診療・介護報酬ダブル改定年だ。

調剤室の様子
薬不足の解消はメドが立っていない(写真:編集部撮影)

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高齢化で増加する社会保障費を抑制しつつ、公的な医療・介護保険をどう維持するかーー。

この難しい問題に直面する診療報酬と介護報酬の2024年度における改定率が2023年12月に決まった。

サービスの公定価格である診療報酬は2年に一度、介護報酬は3年に一度改定されるが、今回は6年に一度の同時改定に当たる。2024年度予算案では、診療報酬の改定率が全体で0.12%のマイナス、介護報酬が1.59%のプラスとなった。

両報酬の原資は、利用者の自己負担を除くと税金と社会保険料からなる。診療と介護の報酬がそれぞれ1%ずつ引き上げられれば、国民の保険料負担は約3000億円増加すると試算されている。ただ、物価高の中で現役世代の保険料負担をさらに増やすのは現実的ではなく、財務省は報酬引き下げの余地を探ってきた。

一方、今回の改定は物価高の中で行われるため、医療、介護の両業界はともに賃上げなどに対応できるよう、報酬の引き上げを要求していた。

薬価部分はマイナス改定

診療報酬に関しては、医療従事者への人件費にあたる「本体」部分が0.88%と、ここ数年では大きな改定率となった。主に賃上げや入院患者への食費高騰などに対応したものだ。一方、薬の値段などの「薬価」部分については1%のマイナス改定となった。

薬価は、人件費や医薬品費用を主とする医療費が増加の一途をたどり、45兆円を超えた今、支出増を抑えるための調整弁になってきた。

薬価は国が決める公定価格だが、医療機関が医薬品卸から仕入れる価格は自由競争で決まる。薬価と仕入れ価格との差が小さくなるように厚生労働省は薬価改定を行っており、2023年度は医薬品全体の半数が引き下げられた。薬価は毎年改定されるが、2024年も引き下げトレンドが続くことになる。

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