『凛として時雨』TK流"才能がない"仕事の原動力 「完成しないからこそ、20年続けられた」

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エッセイの中では「北嶋徹」という1人の人間の半生が、TKさんらしい独特で叙情的な表現によって描かれているのが印象的だ。

神格化された人から吐露された人間味あふれる感情の数々は、捉えどころがなかった彼の輪郭をはっきりと描き出す。本著には、彼を長く応援するファンからも驚きの声が寄せられたそうだ。

TKさん:『TKも人間なんだ』っていう反応もあったみたいですね(笑)

これまでも隠していたわけじゃないんですけど、インタビューで僕自身のルーツまで出すタイミングがあまりなかったから。意外性があったというか、新鮮に映ったのかもしれません。

約20年のキャリアの中で書籍出版は初めて。エッセイの執筆には1年半もの時間を費やし、自身の人生と徹底的に向き合った。

TKさん:僕は今年で41歳になりますけど、年齢を重ねるごとに、限られた人生の時間の中で自分が何を残せるのかをより強く考えるようになりました。
TKさん:例えば旅行先で見た景色も、ファインダーを向けて写真を撮らなければ誰かに共有できないじゃないですか。

「ああ、あのとき写真に残しておけば」と思う瞬間って結構たくさんあるなと思っていて。

それに似た感覚で、エッセイというかたちで“ここまで生きた証し”みたいなものを自分の手で生み出せたのは、これから音楽を作るうえでも僕の背中を押してくれる大切な経験になったと感じます。

きっと自分に才能を感じることは一生ない

(撮影/岡田貴之)
「長きにわたり音楽家として活動できているからといって、僕は自分に特別な才能があるとはまったく思っていない。絶望の淵をさまよい続けて、最後の最後に何かを見つけられるだけだ。(中略)僕は“才能がないのに音楽を作れる才能”だけはあるのかもしれない。」
(引用:『ゆれる』より)

「自分には才能がない」「歌声にコンプレックスがある」──。『ゆれる』の中では、「天才」と称される彼からは想像がつかない言葉が並ぶ。

TKさん:僕はできないことのオンパレードなんですよ(笑)。歌がうまいアーティストもギタリストもたくさんいるし、制作においても短期間で次々と音楽が思い浮かぶ人なんかはすごいなって思います。

僕は毎回、「もう無理なんじゃないか」ってもがき苦しみながら曲を作るから(笑)。
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