東電を「ゾンビ企業」にしてはいけない--『日本中枢の崩壊』を書いた古賀茂明氏(経済産業省大臣官房付)に聞く
しかし、原発ではどうしたか。戦後ゼロから始めた。技術もない中で、最初に原発を造るときは免税にして機器を入れた。漁業権者や地元自治体との調整も政府が全面的に後押し。反対運動があっても機動隊を出して抑え込む。原発の研究開発に莫大なカネが投入され、同時に地元には巨額の交付金が毎年入る。いわば国家総動員で原発を造ってきた。
これは「国家の意志」だ。国家の意志として何が何でもと原発造りを半世紀近く続けてきた。だから54基の原発はできた。ただし、原発は、国家の意志ではあったが、それが国民の意志であったかどうかは疑わしい。国民の意志を問い直したらどうだろうか。法律を作って国民投票をしたらいい。
──それにはきちんとした情報開示が必要です。
国民の意志を測るうえで大事な前提条件は、とことん情報を開示することだ。これなくして国民投票はできない。今のような、国民がパニックになってはといった調子で、情報を小出しする政府では誰も信用しない。いいことも悪いこともすべて開示しないといけない。
原発は安いといわれてきたが、仮定計算の積み重ねだ。いろいろ前提を置いて計算すると原発は安いはず、と政府は言っていた。たとえば、必要な経営情報が公開されていないので、電力会社が本当はいくら使ったのかなど、よくわからないことが多い。電力は競争がなく、顧客の消費者は人質に取られているも同然だ。電力を作ったからカネ払えと言われるような商売になっている。
--国民投票をすれば、大半の人はなるべく早く原発から脱却して、再生可能エネルギー中心に転換すべし、と選択するのでは。
今、再生可能エネルギーを中心にできない理由は、先ほどの原発推進論者の言い分以外にも、100も200も出てくる。しかし、原発を思い出してほしい。ここでこそ、国民の意志=国家の意志とすれば、必ず可能になるだろう。
こが・しげあき
1955年東京都生まれ。東京大学法学部を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。産業組織課長、OECDプリンシパル・アドミニストレーター、産業再生機構執行役員、経済産業政策課長、中小企業庁経営支援部長などを歴任。2008~09年国家公務員制度改革推進本部事務局審議官。
(聞き手:塚田紀史 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2011年6月18日号)
『日本中枢の崩壊』 講談社 1680円 381ページ
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