シュンペーターは一体何を間違えてしまったのか 新しい「経済社会の"変遷"理論」を提示する

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経済変動の体系に関して、シュンペーターは、既存独占的企業から、銀行家に資本提供を受けた企業家による新規企業への覇権の移動が、経済を動かし発展させるメカニズムであり、この発展の原動力は銀行家とその信用創造によって生まれる新しい資本であるとし、供給者サイドでの覇権争いが経済のダイナミズムの源泉であるとした。

しかし、もう一方のサイド、消費者群の変化による経済全体の変動、これが20世紀後半から相対的重要性を高め、21世紀にはこちらが主導となり、経済を動かすようになったのである。

すなわち、経済変動のメカニズムは、生産者側と消費者側、それぞれのダイナミズムが他方の経済主体の行動に影響を与える。生産者側の構造変化が、生産者世界内部のダイナミズムにより起こり、この活力が消費者側の構造変化を生む。

そして、この構造変化が消費者世界の内部のダイナミズムを刺激し、消費者群集を、そしてその欲望をあふれ返させ、その混乱が生産者世界をかき乱し、翻弄する。生産者側は、これに再び逆襲し(オルデガを文字れば「大衆への逆襲」)、大衆を麻薬的サービスで堕落させる。

かくして「迎合資本主義」は確立した

この双方それぞれの内部の構造的ダイナミズム、そして、2つの構造相互のダイナミズム、この二重のダイナミズムが相まって、経済変動のメカニズムは変遷していき、経済は、産業化社会、大衆消費者社会と社会をも巻き込んでダイナミックに変遷していく。これが、近代資本主義社会における、経済社会変遷メカニズムなのである。

第2次世界大戦以降、生産者側の変動メカニズムから消費者側の変動メカニズムに主導権が移った理由は、生産者の変化のスピードを消費者の変化のスピードが上回るようになったからである。21世紀、その速度差はさらに拡大し、消費者を懸命に追いかける生産者、生産者を支配するが消費者には迎合して利益を増やそうとする資本、という構造が経済全体にいきわたり、迎合資本主義が確立したのである。

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