こうして現在、資本主義は重商主義、産業資本主義、金融資本主義という変遷を経て、現在は群集消費者が支配する「迎合資本主義」となっているのである。
社会主義ではない別の形で資本家が支配されるようになったのだ。消費者に振り回され、消費者に迎合する商品を生み出し続けることでしか生き残れない企業、資本が社会を覆い、その資本家、企業家を群衆が支配する社会となったのである。
シュンペーターが想定したのと逆の形で、金融資本主義は乗っ取られつつあるのである。そして、今後は消費者が麻薬漬けになり意欲を失ってしまい、経済変動のダイナミズムが停止していく。変動を止めた資本主義とは、資本主義が消えていくということである。
「迎合資本主義」誕生に貢献してしまったシュンペーター
1点補足すると、シュンペーターの小さな、しかし重大なかつ本質的な誤りが、ここで大きく影響している。それは、イノベーションとは発明ではなく、技術進歩を伴わなくてもよく、いやむしろ、そういうものを含まない、新結合による革新であると主張したことである。
新結合とは安直なコラボである。消費者の奪い合いのための安直な、消費者の目先を買えるための手段である。社会は堕落し、真の思考が停止したのである。
もちろん、良い新結合もあるだろう。ただし、多くの新結合は発明や技術進歩が起きなくなったときの安直な逃げ場であることが多かったし、そうなるのは必然だったのだ。
麻薬消費社会、迎合資本主義を生み出すのに、シュンペーターの誤った「イノベーション」概念は貢献してしまったのである。前回批判した、現代の誤った「イノベーション」概念も、シュンペーターの誤りから生じる必然的な誤りの子孫ともいえる。
もちろん、今回展開した経済変遷理論が現時点で正しかったとしても、迎合資本主義が麻薬化資本主義によって滅ぼされていくという予測が正しかったとしても、その後、必ず新しいことが起き、今回の理論も間違ったものとして否定されるときが来るだろう。
まあ、その前に、現時点でこの予測が正しいということは、今のところ私しか思っていないわけであるが……。
(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が競馬論や週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)
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