
[著者プロフィル]満薗 勇(みつぞの・いさむ)/北海道大学大学院経済学研究院 准教授。1980年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。博士(文学)。専攻は日本近現代史。著書に『日本型大衆消費社会への胎動 戦前期日本の通信販売と月賦販売』『商店街はいま必要なのか』『消費者をケアする女性たち』などがある
高度経済成長期である1960年代に、日本の人々は「消費者」の自覚を得たという。家電や乗用車が普及し始め、生活が大きく変わった時代だ。明るい消費社会の到来かと思いきや、そこには暗さも同居していたと著者は指摘する。
──消費社会の明るさは理解できますが、「暗さ」があったとは意外な感じがします。
高度成長に伴う生活の変化は、当時の人たちにとって不安を伴うものだった。電気のある生活が日常になり、複雑な機械である電化製品が家に入ってくる。化学繊維で作られた衣料品、加工食品など、これまで存在しなかった商品を買う。人々は以前と違う新たな生活を強いられていた。
女性が主婦として家族の生活を支え消費生活を成り立たせたが、彼女らにとって、明るい変化は自動的に訪れるものではなかった。下手な使い方をしたらケガをするかもしれない。新しい、よくわからない複雑なものを、不安を抱えながら生活に取り入れることで、明るい変化をつかみ取ったのだ。一方、企業は消費を喚起しようと活発に広告宣伝をやる。どんどん買えとあおってくる。
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