シュンペーターは一体何を間違えてしまったのか 新しい「経済社会の"変遷"理論」を提示する

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GAFAMやBig Fiveなどと呼ばれる、これらアメリカのテック企業をはじめとして、企業戦略の主流は、在庫どころか生産設備も最小限で、設備投資もせずに、ひたすら身軽さを維持するものとなった。

同時に、消費者の気まぐれな、かつ群集としてまとまって雪崩を打つような行動変化の波に対抗し、かつ彼らからむしり取るために、巨大企業はプラットフォームを独占した。同時に、そのプラットフォームで活動する企業群(前述の企業群の二極化したもう一方の極)を利用し、消費者と実際に製品・サービスを供給する企業群との戯れ(血みどろの企業の生存競争)から安定的に利益を上げる仕組みを作った。

また別の企業群は、この血みどろの戦いを避けるべく、また消費者からの支配から逃れるべく、逆襲した。つまり、消費者を麻薬漬けにするかのごとく、スマートフォン、ゲーム、動画などの強い刺激と常習性を植え付けるサービスを次々と生み出した。

消費者は供給側の虜となり、自ら思考、選択する能力も意欲も失っていった。それはAI(人工知能)の濫用によって拡大し、社会全体を覆い尽くしつつある。

「主導権の移動」に気づかなかった日本企業

ちなみに、日本企業の長期投資戦略が失敗だったどころか、シャープや東芝などの企業が次々に窮地に追いこまれたのはなぜか。それは、需要サイドの変化のスピードが高まりすぎて、供給サイドが長期投資、とりわけ設備投資をすると、技術的には陳腐化しないのに、消費者からは忘れられてしまい、製品はまったく売れなくなっているという、経済変動の主導権が移動していることに気づかなかったからである。

だからこそ、半導体製造請負などの企業は、大規模設備投資はするが、長期ではなく短期で回収するために世界市場をすべて支配することで、市場の広さで回収する戦略にシフトしていったのである。

株式市場も短期トレード、アルゴリズム取引、アクティビストによる短期でのキャピタルゲイン狙いという投資スパンの短期化が起きているが、実体経済、サービス業だけでなく製造業においても、研究開発においてすら、起きていたのである。

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