「診療所の儲けは8.8%」と示した財務省の人海戦術 猛反発の医師会、「恣意的」の批判は妥当なのか

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厚生労働省の予算要求に従えば、2024年度の診療報酬の改定率がゼロでも、高齢化等の影響に伴う医療費の自然増によって、国民の税負担(国・地方合計)は約3400億円増え、医療保険料負担は約4400億円増え、患者負担は約1100億円増えるのである。

逆にいえば、2024年度の診療報酬の改定率がゼロでも、医療界は約8800億円(丸めの誤差あり)の収入増となる。それを踏まえて、診療報酬改定の議論をみるべきである。

年末までの2024年度予算編成をめぐっては、診療報酬改定の議論と並行して、今後の社会保障改革についての議論も行われている。岸田文雄首相は、10月2日に開催されたこども未来戦略会議の第7回会合で、こう発言した。

加速化プランの実施に当たっては、全世代型社会保障の構築の観点からの改革も進めてまいります。この点についても、全世代型社会保障構築会議において、経済財政諮問会議と連携した改革工程の年末までの策定を新藤大臣にお願いしたいと思います。

「加速化プラン」とは、岸田内閣の看板政策の1つである次元の異なる少子化対策の実現のための「こども・子育て支援加速化プラン」を指す。

2023年6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」では、3兆円半ばを費やす「加速化プラン」の財源確保のために、規定予算の最大限の活用や社会保険料の仕組みを援用した「支援金(仮称)」の新設のほか、徹底した歳出改革を行うとした。

こども財源のため、医療・介護の改革は必須

徹底した歳出改革とは、東洋経済オンラインの本連載の拙稿「特別会計『こども金庫』は野放図と思いきや封印策」で詳述したように、社会保障での歳出改革であり、特に医療と介護がターゲットとなる。その医療と介護等に関連する改革工程を、年末までに策定するよう、岸田首相が新藤義孝全世代型社会保障改革担当兼経済財政担当大臣に指示したというわけである。

全世代型社会保障構築会議の事務局は、東洋経済オンラインの本連載の拙稿「2020年代の社会保障改革へ岸田政権の『本気度』」で紹介したように、財務省や厚生労働省等の幹部が併任してその任に当たっている。

ところが、2024年度以降の医療と介護等に関連する改革工程の策定にあたっては、経済財政諮問会議と連携することを、岸田首相は指示している。担当大臣は新藤大臣が兼務しているから連携には問題ない。その経済財政諮問会議は、医療や介護の改革について、かねてしっかり進めるよう求め、その進捗管理にも厳しい目を光らせてきた。

だから、この改革工程は、手ぬるくすることはできないはずである。

2024年度診療報酬改定においては、単に改定率だけでなく、医療改革を促進する項目がどれだけ盛り込まれるかも重要である。もしここで取りこぼしがあれば、それは2024年度以降の医療と介護等に関連する改革工程にて、しっかり進捗管理をしてゆくことになろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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