それは、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会が、11月20日に鈴木俊一財務大臣に手交した提言書である「令和6年度予算の編成等に関する建議」である。
この建議では、2022年度に診療所の経常利益率が、平均で8.8%にのぼっていることを指摘したのである。
この経常利益率はどのように算出されたのか。
それは、財務省財務局が行った「機動的調査」において、全国の医療法人が提出している事業報告書等を利用可能なものをほぼすべて分析して算出されたものである。財政制度等審議会の建議を取りまとめる過程で、その数字が示された。
「機動的調査」とは、どのように行われたのか。
そもそも、医療法人は、事業年度が終わると、医療法に基づき、事業報告書等を各都道府県知事に届け出なければならない。そして、医療法施行規則に基づき、都道府県知事は過去3年間の事業報告書等を閲覧できるようにすることとなっている。
報告資料の電子化が道を開いた
ただ、事業報告書等は、そもそも紙媒体で届け出られており、閲覧できたとしても分析するのはかなり困難だった。
2023年度からは、その事業報告書等を電子化するなどして都道府県のウェブサイトで閲覧できるようにした。
そうした事情を踏まえ、財務省が各地にある財務局等と協力して、一般病院を経営する医療法人と一般診療所を経営する医療法人が届け出た、2020事業年度から2022事業年度の事業報告書等を入手して、医療法人の経営状況等を調査した。事業報告書等には、貸借対照表や損益計算書、許可病床数などが記されており、事業収益、費用、利益などが把握できる。
ただ、一部の都道府県等では、事業報告書等の閲覧を、窓口での対応しかしておらず、写しの交付ができないという制限を設けていたりしたため、分析に用いることができなかった。2023年度からウェブサイトで閲覧できるようにするよう、厚生労働省が求めているにもかかわらず、それに応じていない自治体があることが、調査の過程で明らかとなった。
その自治体には、医療法人の事業報告書等の閲覧を制限しなければならないようなやましい事情でもあるのだろうか。隠さなければならない情報などないなら、デジタルでの全面公開を早期に行うべきである。
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