弱る自治体をぶんどる「過疎ビジネス」の実態 企業版ふるさと納税のカネが寄付企業に還流

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企業版ふるさと納税は地方創生の財源不足に悩む自治体向けに国が創設した制度で、寄付額の最大9割が法人税などから控除される。個人版のふるさと納税とは異なり、癒着を防ぐため自治体から企業への経済的な見返りは禁じられている。

国見町の事業でDMMは、ワンテーブルを介した子会社の事業受注と税額控除によって多額の利益を得られる。寄付金の環流とも、制度趣旨を逸脱した「課税逃れ」とも言えそうな話だが、制度を所管する内閣府が2022年12月にQ&Aの形で示した見解に従えば、この事業スキーム自体を「クロ」とは言えない。

内閣府によると、寄付の対象事業を受注するには自治体の入札プロセスを経る必要があり、その入札プロセスは公正公平になされているのであるから仮に寄付企業や子会社が寄付金を使った事業を受託したとしても「自治体と企業の癒着の問題は生じない」(内閣府担当者)のだそうだ。

そんな甘い制度設計でいいのかと首をかしげたくなるが、疑問はそれだけではない。妙にできすぎ感のある国見町の救急車事業は、はたして本当に「公正公平な入札契約のプロセス」を経たのだろうか。今年10月に国見町議会で設置された百条委の最大の焦点はそこだ。

結論を先に言えば、「出来レース」としか言いようのないプロセスであったことが、『河北新報』や町監査委員の調査ですでに明らかだ。

時系列で具体的に見ていく。

寄付直後に吸収合併

国見町によると、救急車事業を立案したきっかけはワンテーブルが事務局を務めていた町の共同事業体「官民共創コンソーシアム」での議論だったとされる。同コンソーシアムは町と企業が連携して課題解決を話し合う組織で、町が2022年1月に公募型プロポーザルで事務局の委託先を募り、3月に発足した。

コンソーシアムが設立準備に入った2022年の2月、DMMは事業原資となった4億3200万円のうち3億5700万円を町に匿名で寄付した。時を同じくしてワンテーブルはベルリングと業務契約を結び、救急車7台を2023年3月の納入期限で発注した。町が救急車事業の委託先を公募する8カ月も前のことだ。

福島県国見町が1台3600万円で購入した高規格救急車。「高額すぎる」という指摘も(写真/河北新報)

事業原資の残り計7500万円は、DMMのグループ2社が7、8月にそれぞれ寄付した。8月に6000万円を支出した企業は、寄付の直後にDMM本体に吸収合併され、権利関係はすべてDMMが継承した。最終的に計12台のリース車両の製造で事業がまとまったのは、ベルリングの車両調達の状況に合わせて寄付の積み増し調整がなされた結果だった。

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