「マフィン」騒動で分かったホントに危ない食中毒 キッチンのタオルは1食ごとに交換が望ましい
「食中毒は知らないと防げない。今回の件について、『防腐効果のある砂糖が少なかったことや、無添加も関係しているのでは』という声もあるようですが、そういう問題ではありません。有機物の中では、添加物が入っていようと砂糖がたくさんであろうと、増殖条件を満たせば、食中毒菌はどんどん増殖します」
食中毒対策をするうえで重要なのは「温度」と「保存期間」だという。
「食中毒を起こす菌はさまざまで、加熱しても死滅せず、冷蔵庫に保管しても増殖を抑えられない菌もある。食中毒の各菌の性質を知り、対策を講じなければならない」(中島さん)
たとえば、小麦といった穀物などについている「セレウス菌」も、食中毒の原因となる菌だ。
「セレウス菌は130℃でも死滅せず、4℃以下でないと増殖を抑えきれない。また、黄色ブドウ球菌は冷蔵庫で保存すれば増殖を抑えられるが、調理器具などに付着していれば、たとえ手袋をして調理しても、調理器具⇒手袋⇒食品、と菌が付着してしまう。冷蔵庫ではなく常温においておけば、黄色ブドウ球菌は増殖していきます」(中島さん)
菌が増殖できる環境下での保存期間が長くなれば、いずれ食中毒を引き起こす。
2023年の食中毒発生事例を見ると、原因食品のひとつにいちご大福が挙げられ、病因物質が「ノロウイルス」となっている。これはもしかしたら、ノロウイルスが付着した「どこか」を触って、そこからウイルスがいちご大福に移り、食中毒発生にいたったのかもしれない。
危険はいたるところに
食中毒を引き起こす危険は、食品を扱っていれば、実はいたるところにある。
日本食中毒防止協会がHACCPの導入を指導した飲食店は100社以上。そのひとつ、複数店舗を展開するラーメン店は、中島さんたちの研修を受け、空気を嫌う性質の「ウェルシュ菌」の存在を知った。この菌は酸素の少ない“鍋底”を好み、何時間煮込んでも耐えうる芽胞を形成する。
つまり、粘性の高い煮込み料理を寸胴鍋で作った場合、その後の保存状態によっては増殖する危険がある。研修後、そのラーメン店は閉店時は寸胴を急速に冷やし、冷蔵庫にしまうルールに変えたという。
「指導をすると、『こんなに食中毒の危険があったんですか』と驚かれることは多い」(中島さん)
家庭での食中毒を防ぐため、気をつけるべきことは何か?