灘→東大→YouTuber「年収捨てた」彼らの波乱人生 なぜ2人はあえて「エリートコース」降りたのか

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だからこそ、彼は絶対に落ちられない状況を想定して受験勉強をしていた。「どんな問題が出てもどんな体調で挑んでも受かるように、年度ごとの難易度の変動が激しい得意の数学よりも、英語や理科などの科目を重点的に勉強した」と彼は語った。後の外銀トレーダー職のキャリアにも通ずるリスク回避思考が、志望した東大の合格点超えをもたらしたのである。

一方、青松氏は年に100人しか入れない日本最高の難易度を誇る東大理III(医学部)に1浪で進学。

彼はもともと、灘の中ではとくに上の成績だったわけではない。「高校2年生まで180人いる理系クラスの中で、130番くらいの成績だった」と言う。

青松氏は、とくに苦労をせずに中学入試で灘に合格したそうだ。そのため、「死ぬ気で何かに打ち込んだことがない」という悩みがあった。そこで、「自分の力で頑張る最後のチャンス」だと考え、東大理III(医学部)への挑戦をそこに位置付けて勉強を重ねたが、惜しくも現役での合格は届かなかった。

そのため浪人を決断したが、その1年間で勉強以外にやることといえば、「本番で解ける問題が来てくれと祈ること」だったと言う。結局、本番で大きな失敗をしなかった彼は「ラッキーでたまたま受かった」と謙遜するが、かつて自分には到底無理だと思っていた目標を達成したことは、彼自身の中でも大きな自信になったと言う。

偏差値よりも大事なこと

偏差値が高い環境こそが正義……その価値観のもとで勉強を続けていると、経歴や年収という多数の人から評価される基準に価値を感じるようになってもおかしくない。

しかし、彼らがそうならなかったのは、類稀なる能力に頼って楽をするのではなく、その能力や環境を生かしてさらに自身を極限の状況にまで追い込み、勝ち取ってきたものがあるからなのだろう。

絶対に合格しなければならない状況の中で受験に立ち向かい乗り切った田内氏と、自分の殻を破るために東京大学理科III類(医学部)に挑戦して合格した青松氏。

彼らの受験は他の受験生と比べても過酷な状況に立たされていたように思える。

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