参加国から不満も「大阪万博」で見えた日本の問題 日本には万博を開催する余裕はすでにない

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だが、実際には大阪は2つの下位候補(ロシアのエカテリンブルグとアゼルバイジャンのバクー)に勝っただけのことだった。この3都市の経済的な重みを考えれば、トヨタがスケートボードと自転車に勝ったようなものだ。

スマートフォンであらゆる発見がワンタッチでできる時代、ほとんどの大都市は万博にもう存在意義がないと考えている。経済的にも、万博における二酸化炭素排出量的にも、日本には主催する余裕などないのだ。万博は、大阪で初めて万博が開催された1970年に若かった人々にとっての「夢よもう一度」でしかない。

一方で、「最近の建築家は、社会や地球にとって持続可能で意味のあるものを作りたがっている」と日本の建築家ユニット、アトリエ・ワンの塚本由晴氏は語る。

前進がなかった国際参加者会議

大阪万博は輝きを放つ機会ではなく、最悪の日本のショーケースと化し始めている。これは日本を世界に示す場であるが、最終的には好意よりも恨みを買う結果になるかもしれない。企業にとっては、イメージアップどころかイメージダウンに終わるかもしれない。

11月14日と15日の2日間、大阪で行われた国際参加者会議(IPM)の後、日本と参加国の当局は、物事が順調に進んでいると主張した。だが、海外のプロジェクト・マネジャーたちは不満と怒りをあらわにしている。「この2日間、IPMはわれわれの最も深刻な問題である請負業者の確保と経費の抑制に取り組まなかった」とある関係者は嘆く。

大阪万博はすでに、あるべき姿の影を潜めている。約56のパビリオンは当初すべて各国が直接担当する「タイプA」になるはずだったが、コストと時間の制約から、最大25のパビリオンは主催者が提供する「タイプX」となる。

「これらのパビリオンは、オリジナリティのショーケースであるべき万博の精神を裏切る空っぽの箱でしかない」とあるプロジェクトマネジャーは言う。

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