急逝した三井住友FGの太田CEO、「脱銀行」への意欲 大手行トップの中でも改革への意欲が特に強かった

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投資銀行部門が長く、プロジェクトファイナンスの実績が豊富だった。ただ、若い頃はまだプロジェクトファイナンスが日本に根付いてなかったため、上司が見慣れない案件を通そうと行内外を駆け回った経験を持つ。

率先垂範の「トップ営業」も目立った。SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長との個人的な関係をテコに最終的に資本・業務提携にこぎ着けた。太田氏によると、北尾氏から直接面談を申し入れられ、2人は意気投合し、3カ月後には最初の業務提携に至った。メガバンクと毀誉褒貶(きよほうへん)の付きまとうSBIとの提携はサプライズとなったが、北尾氏は純粋な人だとして意に介さなかった。

アジアに第2、第3のSMBC(三井住友銀行)を作る「マルチフランチャイズ戦略」も掲げた。資本力に勝る三菱UFJフィナンシャル・グループがアジアでの出資戦略を加速させる一方、三井住友FGは邦銀として初めてインドのノンバンクに果敢に出資した。

今年3月にはリテール業務で、金融総合アプリ「Olive(オリーブ)」を投入し、大手行で初めて銀行口座とクレジットカード、証券などの金融サービスをワンストップで提供するサービスを開始した。常に大きなビジョンを描き続け、リテール分野でも海外分野でもライバル行が追随できない領域を切り開いてきた。

「正しく稼ぐ」ことへのこだわり

高校、大学時代にアメリカンフットボールやバスケットボールで鍛えた身長180センチ超の大柄な体格に、よく通る声、大きな笑い声。専務や副社長にまで上がっても部下を引き連れて朝まで飲み続け、そのまま出社することも珍しくなかった。豪放磊落(ごうほうらいらく)な性格に見えながら、実は心細やかで部下や周囲に対する気遣いを欠かさなかった。パワーハラスメントをする部下はまったく評価しなかった。

収益に対しては貪欲だったが、一方で「正しく稼ぐ」ことへのこだわりを持ち続けた。23年度からスタートさせた中期経営計画で掲げた「社会的価値の創造」で、従来の経済活動優先から環境問題や人権、格差などの社会課題解決を企業としても取り組む必要があると訴えたのは、太田氏の強い意向だった。

今年10月初旬の取材時には「Olive」を念頭に、構想はまだまだ終わりではないと強く語っていた。

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  • 三井住友FGの太田社長がすい臓がんで死去、中島副社長が代行に 

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著者:布施太郎、鈴木英樹

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