正論を吐く人は「リーダーの器」がないといえる訳 坂本龍馬や西郷隆盛に学ぶ白黒をつけることの愚

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また、最近、人望のある人を、「誰からも嫌われない人」「誰からも好かれる人」と捉えている人が多いようです。そして、そのためには「相手の価値観を受け入れる」ことが重要という風潮があるようですが、これは間違っています。もちろん、否定してはいけない個人の価値観は存在します。しかし、同時に組織として「共通の価値観」も絶対に不可欠です。

企業を例にとると、ベンチャー企業には強烈な「共通の価値観」があります。「新しい製品を世に出す」「上場して一流企業の仲間入りをする」などの目的のために、「何をすべきか」という価値観が社内に形成されやすいからです。

一方、大企業になると、目標は「前年度比15%アップ」など、共感の得にくい経営層だけのものがピラミッド式に下に落ちていくだけの状態になりがちで、「何をやるべきか」はマニュアル化されており、「価値観」は形骸化され、さらにそこに多様化の波がきてしまうことにより、判断基準も曖昧になり、「判断できないリーダー」が大量に生まれてしまうという結果になります。

人望を集める人は、その人の資質というよりも、その組織そのものの状況によるものが大きいのです。その意味では、組織が価値観を強く持つのは、「創成期」と「危機期」です。組織自体が環境に対して能動的に動くタイミングに価値観が強く生まれ、その価値観を体現する人物が現れ、その人物が人望を集めるのです。

組織内で「良い」「悪い」を明確にする

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企業には大抵の場合、ミッション、ビジョン、バリューが定められていますが、この中では「バリュー」こそが、その名の通り「価値観」を示すものです。「バリュー」と「企業風土」が一致しているのが望ましいのですが、最近はこの手の言葉はただのお飾りになっているケースが多いようです。これは非常にもったいないことです。また、この手の文言は大抵の場合、抽象的な美辞麗句であることが多いといえます。

バリューを価値観に変えるためには「良い」「悪い」が明確になることが必要です。例えば、「変革」であれば、「変革」を促す行動が明確に定められ、「変革」を阻害する行動が明確に定められる必要があります。そして、それはすべての階層、すべての職種に当てはまらなければなりません。それが定められたとき、「人望」が生まれる素地ができあがるのです。

眞邊 明人 脚本家、演出家

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まなべ あきひと / Akihito Manabe

1968年生まれ。同志社大学文学部卒。大日本印刷、吉本興業を経て独立。独自のコミュニケーションスキルを開発・体系化し、政治家のスピーチ指導や、一部上場企業を中心に年間100本近くのビジネス研修、組織改革プロジェクトに携わる。研修でのビジネスケーススタディを歴史の事象に喩えた話が人気を博す。尊敬する作家は柴田錬三郎。2019年7月には日テレHRアカデミアの理事に就任。また、演出家としてテレビ番組のプロデュースの他、最近では演劇、ロック、ダンス、プロレスを融合した「魔界」の脚本、総合演出をつとめる。

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