正論を吐く人は「リーダーの器」がないといえる訳 坂本龍馬や西郷隆盛に学ぶ白黒をつけることの愚

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先ほど「人望」と述べましたが、そもそも人望とはなんでしょうか。辞書で「人望」を引いてみると、以下のような意味が記されています。

「その人に対して多くの人が寄せる尊敬・信頼・期待の心」

単純に読めば、尊敬できたり、信頼できたり、期待できたりする人です。言葉としてはイメージしやすいでしょう。しかし、ここで大事なことが1つあります。尊敬・信頼・期待は「何に」対して生まれるのでしょうか? これが人望を生み出す重要な要素です。「何に」を理解しなければ、人望を理解したことにはならないのです。

その答えは「価値観」です。尊敬・信頼・期待は「価値観」が共有されていなければ生まれません。多種多様でバラバラの価値観の中では人望を集めることは難しいといえます。

ですので、人望を獲得するには、何よりも「価値観」を理解することが重要です。「価値観」とは「何に価値があるかの判断基準」です。平和・豊かさ・自由など、その基準はさまざまあります。そして価値観を共有する集団が組織を形成します。

組織は共通の価値観を持った人が集まるからこそ、効率よく大きな力を発揮することができます。企業であれば、規模を拡大し、よりたくさんの人にサービスや製品を展開できるでしょうし、政党であれば、目指す社会を実現することができます。チームスポーツであれば、勝利を得ることができるでしょう。

人望あるリーダーの組織は合意形成が早い

そして組織には必ずリーダーが必要です。リーダーは組織における意思決定者です。このリーダーに必要なものこそ、「人望」です。人望のあるリーダーとは、尊敬・信頼・期待を部下から集めているリーダーです。

こういう人物がリーダーであれば、部下はリーダーの意思決定に対して迅速に従うでしょう。つまり合意形成が速く、行動が速くなります。一方、人望のないリーダーは、部下を説得しなければならず、合意形成に時間がかかります。仮に強引に従わせたとしても意欲が低いわけですから、その行動が遅く、精度も低いものになるでしょう。人望は組織の目的達成には欠かせないものでもあります。

人望を集める人はその組織が持つ「価値観」の最も優れた体現者である必要があります。他の誰よりも、「価値観」に対する判断基準が明確で厳しい人です。企業であれば、その「価値観」は「企業風土」で表されることが多いでしょう。国であれば「国民性」、チームであれば「チームカラー」です。

最近、組織においては多様性という名のもとに「価値観」が分散されてしまう傾向にあります。組織の中の「価値観」がバラバラだと、当然ですが、人望を集めるリーダーは生まれません。価値に対する基準が人によって違うのですから、そこに尊敬・信頼・期待が集約されることはないでしょう。

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